ただ問題文に線を引くだけが情報整理ではない!:第1回特色検査の添削問題を添削して思うこと

2015年7月14日

7月11日(土)に第1回目の特色検査対策添削講座の提出期限を迎え、現在頑張って添削をしている途中です。特に外部生の添削は、直接口頭で指導できないので、1人の模試を添削するのに1時間は余裕でかかります。○や×を付けるだけだったらそこまで時間がかからないのですが、5教科の勉強と違って解き方が重要になる特色検査では、○や×を付けて点数だけを出して返却しても力は付きません。その子がどういう思考で考え、どういう図を書いたのか、または書かなかったのか。問題文のどこに線を引いたのか、または引かなかったのかというところまでを見ながら、その子の思考をできるだけ辿ってやることで見えてくるものがあると思っています。
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内部生の添削問題も、全員分ザッとですが添削を終えました。で、内部生に一言いいたい。

「やたらめったら線を引けば良いってもんじゃないぞ」

第1回特色検査講座について

線を引いただけでは情報は整理されない

確かに重要なところには線を引きながら解きなさいと言い続けてきました(参照:「中2生に入試問題を解かせてみた結果・・・ヒドすぎてもう笑うしかない」)。その結果、小テストなどでも線を引いたりマークをしたりしながら解く子も多くなりました。そういう意味では中2の3月よりもだいぶ成長したでしょう。

でも、第1回の特色検査対策講座で学んで欲しかったのは、線を引いて解くということではなく、文字情報をいかに図や表にして整理するか、または、すでに表などによって整理された情報を何を読み取るかということでした。線を引いたら引きっぱなしではなく、そこから図や表に整理することが重要だったのですが、問題を解くのに有効な図や表をきちんと書けている子は皆無でした。これは内部生だけでなく、外部生にも当てはまります。

文字情報をいかにビジュアル化できるかどうか

第1回の特色検査対策講座のテーマは「情報整理力と論理的思考力」。練習模試の問1(アミノ酸合成経路の問題)は、まさに「情報整理力」のみを必要とする問題でした。難しい言葉で長々と書かれたリード文にいくら線を引いたところで、頭の中で情報は整理できません。できる人もいるかもしれませんが、それはほんの一部の天才だけでしょう。それに対して、いかに有効な図を書くことができるかという「情報整理力」を見たかったのですが、この問題に対して有効な図が書けていた内部生は残念ながらゼロでした(外部生は多少なりとも書けている子がいました)。もう一度言いますが、ゼロ人でした。

情報整理力は鍛えられる

文字情報を図や表などのビジュアルに落とし込むという力は、特色検査だけでなく、たとえば数学の方程式の文章題などを解く力にもつながります。逆に言うと、数学の方程式などの文章題に対して正しい図や表を書いて考えていくことでも、情報整理力は鍛えられるということです。

ただ重要なところに線を引けばいいという発想から、情報をビジュアル化するという発想への転換が必要です。はじめのうちは、どのような図を書けばいいのか分からないかもしれませんが、色々な問題に対して図を書いていくうちに、図を書くためのポイントが分かるようになります。これは、能力差ではなく、練習を積むことで必ず向上する力です。図を書くための練習として、内部生に対しては当初予定していなかった模試の解説授業を行うつもりです。

第2回特色検査講座のテーマは「情報分析力」

第2回目の特色検査対策講座は「情報分析力」です。グラフや表など、色々な書き方でまとめられたデータを読み取り、そのデータを問題に応じて正しく分析をする力を養います。情報分析のためのポイントを少し書いておきます。

情報分析の手順は、「データの単位・タイプの見極め」→「データの読解」→「解釈」→「表現」です。

まずはデータを見極める

あるデータを目にしたとします。最初にすることは、それがどのようにまとめられたものかを確認することです。たいていのデータは、何かを述べるために作成されたものですが、「何を伝えたいか」によって、同じデータでもその単位や四捨五入をする桁数、データのまとめ方(グラフや表など)が異なります。たとえば、百分率などの割合で表されているデータは、割合にしたときに何かが読み取れるからそうしている場合がほとんどです。他には、折れ線グラフで表されているデータであれば、折れ線グラフにしたときに変化の特徴が如実に現れるからそうしているのです。このように、特にデータの単位とまとめ方の種類に着目すると、「この問題は何を伝えたいのか」が見えてくるようになります。

次はデータを「読解」する

データがどのようにまとめられたかを確認したら、次はその内容を読み取ります。これを「読解」と言います。国語や英語の文章読解のように、データも「読解」が必要なのです。データの「読解」の最も大切なポイントは、そのデータが持つ特徴的な部分は何かをとらえ、言葉にするということです。「10年ごとに人口ピラミッドを比較すると,総じて高齢者の部分が大きくなる傾向にある」とか、「先進国と発展途上国では異なったパターンが読み取れる」などです。

特徴をとらえて言葉にする際のポイントは、「他のデータと比較したときの相違点」、「データが変化したときのタイミング」、「データの変化の傾向」の3つです。要するに、変わった点とその性格です。特色検査に登場するデータ問題は、必ず何かしらの相違点や変化があります。それがなければ問題にならないからです。よって、その相違点や変化を正確に読解することが、データ分析の最も重要な部分になります。

データを「解釈」する

次の段階は、読み取った特徴から、「なぜデータが変化したのか」「なぜこのような相違点があるのか」を考える作業をします。これがデータを解釈するということです。正しく解釈するためには、英数国理社などの5教科の知識や一般常識が必要になることもあります。あるいは、知識は必要でなくとも、その背景を自分なりに推測して意見を論理的に述べなければいけない問題も多いです。このように、データ分析の問題には、5教科の知識や一般常識、さらには推理力などを必要とするため、特色検査との親和性が高いのです。

一つ気をつけておきたいのは、解釈は一つだけとは限らないということです。データは現実をある一つの角度からすくい取ったものです。しかし、その現実は、いくつもの事情が絡み合って出来上がっているということが多いのです。その「現実」に近いものが得られるように、出来る限り複数の観点から解釈を考えるようにしましょう。

解釈を表現する

最後は解釈したものを表現することが必要となります。データ分析の問題では、「○字以内で述べなさい」というような記述型の問題が多いのですが、これはデータを読解し、どのように解釈したかを論じたかを問うために用意された問題がほとんどです。つまり、データ分析の問題にある記述型の設問では、データから読解できたこととその解釈をまとめると、ほぼ確実に点数がもらえます。ここで大切なことは、解釈の時にデータの数値をきちんと利用するということです。数値を利用することで、解釈に客観性を持たせることができます。

まとめ

外部生の方は、採点が終了した人から次の教材と添削結果を郵送していきます。内部生は、土曜日の入試模試後に解説授業を行い、その時に次の教材を一緒に渡します。一筋縄ではいかないのが今年の中3だとは分かっていたつもりなのですが、やはり一筋縄ではいかないものですね。何かをやるたびに、次々と新たな課題が見つかっていきます。それでも、心折れている暇はありません。一つひとつ確実にできるようになっていきましょう。