特色検査は、学校からのメッセージであり、アートでもある。

特色検査対策問題作りでヒーヒー言っている今日この頃です。対策問題の題材を考えるために、最近いろんなジャンルの本を読んだり、高校の教科書を引っ張り出して勉強し直しているので、おかげで余計な雑学が増えてきています。
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ここ1ヶ月で読んだ本

沈黙の春 (新潮文庫)
生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
暗号と情報社会 (文春新書)
入門 現代物理学(中公新書)
論理パズル「出しっこ問題」傑作選―論理思考のトレーニング (ブルーバックス)

「暗号と情報社会」なんて本、初めて手に取ってみたジャンルだったのですが、公開鍵暗号と共通鍵暗号の違いが分かったりなど、結構面白かったです。フェルマーの小定理と公開暗号鍵を絡めたRSA暗号(ネット上でのデジタル署名で使用されています)は、特色検査の良い題材になり得るんじゃないかなーと思いながら読みました。

これらは全て、特色検査対策問題作りのネタ探しのために読んだ本なので、中学生にオススメというわけではありません。ただ、以前も紹介したように、「生物と無生物のあいだ」は、トップ校を目指す中学生にはオススメです。論理パズル「出しっこ問題」傑作集は、電車通勤のお父さんお母さん方にはちょうどいい暇つぶしと脳トレになると思います。

特色検査は、アート

これまでも特色検査の対策問題を何度か作ってきましたが、今回はさらに分野別に分けて細かく作っています。実際に自分でネタ探しから始めて、特色検査っぽい問題を作ってみれば分かるのですが、普通の英数国理社の試験問題と違って、特色検査の問題を作るには相当な労力がかかります。そういう目で改めて特色検査を見てみると、各高校の特色検査の問題は本当によく出来ているなと感心します。神奈川県公立高校の特色検査って、もう一種の作品ですよ。アートです、アート。

ご存知だとは思いますが、特色検査は各高校に勤務されている現職の先生方自らが作成されているんです。高校での授業や部活動などの膨大な仕事をこなしながら、これぐらい完成度の高い特色検査を作成されているのですから、本当に頭が下がります。問題研究や作問に対する労力はハンパないでしょうね。逆に言うと、これくらい気合いが入ったテストを受けられる受検生は、本当に幸せだと思いますよ。

特色検査は、学校からのメッセージ

以前、ある特色検査実施校に訪問した際に、特色検査の作成方法について尋ねたことがあるのですが、その学校の校長先生が、「全体としての基本理念を共有した後は、基本的に担当科目ごとの教諭に任せています。そうすると、皆結構な力作を作ってくるので、そこから“こういう能力を持った生徒に入学して欲しい”との目線で、問題を選定します。」と仰っていました。

特色検査は、言うなれば「学校からのメッセージ」なんです。たとえば、厚木高校は、毎年英語の長文読解問題を1題、理数の問題を1題(今年は高校生物で習うDNAの二重らせん構造と塩基の問題)必ず出題しています。これは、厚木高校の指導目標である「すべての生徒に科学リテラシーとグローバル教育を」に完全に一致します。また、湘南高校は、毎年特色検査の問3の中で、先入観にとらわれることなく情報を適切に処理し、物事の本質を見抜く洞察力を測る問題を出題しています。今年の湘南高校の問3の、「食料や飼料の輸送に伴う二酸化炭素排出量削減のためには、国産牛肉と輸入牛肉とどちらを選べばよいか」を記述させる問題はお見事でした。十分に思考せずに先入観のみでいくと、確実に「国産牛肉」を選択するでしょう。でも、この問題の正解は「輸入牛肉」です。「先入観を排除し、いろいろな情報を吟味して自分の頭で物事を考えることのできる人になってください」というメッセージがヒシヒシと伝わってきます。

志望校の言葉なきメッセージをしっかりと読み取ろう

特色検査校を志望している人は、自分の志望校の特色検査をじっくりと研究してみましょう。ただ問題を解いてみて「難しい」と嘆くだけではなくて、いったいどういう種類の難しさなのか、どんな能力を問われているのかを何度も解きながらじっくりと考えることで、その志望校からの「言葉なきメッセージ」を読み取れることができるでしょう。志望校からのメッセージが読み取れたら、自然と特色検査対策として何をやればいいのか、どういう勉強をしていくべきかが分かってくると思います。

塾の先生は、特色検査を自作してみましょう

あと、このブログの読者には塾の先生も多いと思いますが、塾の先生には特色検査の問題を実際に自作してみることをオススメします。もちろん、自作することはめちゃくちゃ面倒くさいのですが、実際に自作してみると、特色検査を解くための思考プロセス、必要となる能力が手に取るように分かるようになります。また、一見全く違う問題のように見える各高校の特色検査でも、思考プロセスの共通点が意外と多いことが分かり、対策しやすくなるのではないでしょうか。