「飛ぶ教室」読書会開催レポート

2017年6月6日

少し前の話になりますが、「飛ぶ教室」を課題本とした2回目の読書会を開催したので、今日はそのレポートです。

登場人物を整理

1回目の読書会では、登場人物の特徴と相関関係を整理していきました。

この「飛ぶ教室」は、やたらと登場人物が多く、全員を把握するのが大変なのですが、この小説以外にも、読書会や国語の小説文であらすじを把握させる時、人物相関を書かせることがよくあります。ほとんどの小説は人間関係をテーマに描かれているため、登場人物の関係や特徴を整理しておくだけで、頭の中に話が随分と入りやすくなります。

主要キャラクター5人

飛ぶ教室の主要キャラクターは、同じ寄宿舎に身を寄せるギムナジウム高校の5年生の個性豊かな次の5人です。

  • マティアス・ゼルプマン…勉強は苦手だが、腕っぷしが強くケンカっ早い。いわゆるガキ大将だが情に厚い。
  • ウーリ・フォン・ジルメルン…小柄で気が小さくて臆病者。それを克服するために、物語の後半大事件を起こす。
  • ゼバスティアーン・フランク…クールな性格でみんなの指揮をとるまとめ役。なかなか素直になれない。
  • ジョニー・ヨーナタン・トロッツ…口数が少なく、物語を書くことが好き。幼少期に親に捨てられた暗い過去を持つ。
  • マルティン・ターラー…学年で一番勉強ができる優等生で絵を描くのが上手。親思いだが家が貧しい。

大人・先生たち

  • ヨーハン・ベク先生(正義さん)…寄宿舎の舎監の先生。いつも正しく、そして暖かく、生徒たちに寄り添う。生徒たちからも「正義さん」と呼ばれ信頼されている。
  • ローベルト(禁煙さん)…市民農園の一画に置かれた、「禁煙車」と書かれた客車の中に住んでいる。世捨て人のような暮らしをしているが、少年たちには慕われている。

1回目の読書会で、まずこの主要人物を整理して、2回目の読書会までの2週間でもう一度読んでくるよう指示。登場人物を整理したことで、初めはよく理解できなかった生徒も、2回目には随分と話の理解が深まっていました。

印象に残ったキャラクターについて

2回目の読書会はアウトプット中心です。

まずやったことは、前回まとめた登場人物の中で、特に印象に残ったキャラクターについてのまとめ。どんな人物で、なぜその登場人物が自分にとって印象に残ったのかを簡潔にまとめる作業です。

生徒たちに一番人気だったキャラクターは、弱虫のウーリ。やはり彼が起こした事件が強烈だったようです。

以下、生徒たちのウーリへの感想。

みんなに意気地なしと言われたことから、勇気を見せるために飛び降りたのがすごいと思った。(小5男子)

こわがりでおくびょうだと言われ、自分なら、へこんでしまうかもしれないけれど、ウーリはこわがりでおくびょうではない事をしょう明しようと、高いところからかさを広げ降下しようとした勇気がすごいと思ったから。(小6女子)

などなど、ほとんどの生徒がウーリ推しの中、マティアスやジョニー、禁煙さん、中にはゼバスティアーンというちょっとマイナーキャラ推しの生徒もいて、なかなか興味深かったです。

以下、ジョニー、マティアスを挙げた生徒たちの感想。

ジョニー。父さんにドイツに送られてみすてられたところ。大きくなったとき、夜眠れないままに涙を流すことがあり、とても悲しい気持ちがわかったから。(小6男子)

マティアス。理由は体格ががっつりしていて、けんかに強いのに、ウーリがけがをしたときには、とても心配して、おみまいに行ったので、本当はやさしい人なんだなと思ったからです。(小6女子)

生徒たちのブックレビュー

読書会の最後は、読書感想文ではなくブックレビューを書いてもらいます。いわゆる書評ですね。

読書感想文を書きなさいというと、みんな良いことしか書かない。というよりも良いことしか書けない。でも、書評となると良いことも悪いことも何を書いても自由です。また、読書感想文では養われない客観性、端的に表現する力、独創性が養われます。生徒たちには、星5つで評価させ、なぜその評価をつけたのかが分かるように客観的に、また自分の書評を読んで、人がワクワクするような書き方を意識しなさいと指示をしています。

以下、生徒たちのブックレビューの抜粋。初めてにしては、まずまず上手に書けたのでは?

「助け合える友達」★★★★★
困っている友達はみんなで助けるというところが、とてもすてきです。そういうやさしい友達がいていいと思いました。
寄宿舎での話はドキドキするし、「あったりまえ!」と前向きに考えるところも大好きです。
素直な気持ちがあることは大事だと思いました。(小6女子)

「おもいやりのある五年生」★★★★
全ての登場人物にさまざまな個性があって、すごく楽しめる一冊です。
出てくる大人は、全員すごくいい人で、読んでいて感心します。
この本の中のいろいろな事件が面白いです。
ただ、登場人物が全員外国人なので、少し読みにくいです。(小6男子)

「寄宿学校の涙と笑いのクリスマス物語」★★★★★
この本は、個性ゆたかな少年たちのそれぞれの悩み、悲しみ、そしてあこがれの生活の物語です。この本には、おくびょうな人や、びんぼう、クールなど、色々な性格の人やくらしがでてきて、わくわくする本です。
ぜひ読んでみてください。(小5男子)

「あこがれ」★★★★★
この本には、やさしさ、勇気、たくましさ、様々なキャラクターの様々な考え方があります。この本を読んだら、自分のたりない考え方がわかり、自分が印象に残ったキャラクターにあこがれを持つと思います。また、たくさん登場するキャラクターの性格や特徴を探してみることもおもしろいところです。(小6女子)

「読めば読むほどおもしろい」★★★★★
登場人物、1人1人の特ちょうを理解すればするほどおもしろい!
読むたびに、友情、人間関係が感じられていき、いろいろな見方をすることでとても楽しむことができます。
ぜひ読んでみてください。(小6男子)

「たくさんの友達」★★★★★
この本は寄宿舎で起こった話です。いろいろな登場人物がでてきておもしろいです。人の勇気が感じられます。
いろいろなハプニングが起こったりしますが、5人でのりこえたりするのがおもしろいです。(小5男子)

次回は「冒険者たち」

さて、6月〜7月の読書会の課題本は「冒険者たち ガンバと15ひきの仲間」。岩波少年文庫が続きますが、こちらも名作中の名作です。

小学生には、できるだけ「名作」と呼ばれるものに多く触れさせたいと考えています。あとは今の小5小6生の読書レベルを考慮して、課題本を選定しています。

「飛ぶ教室」よりも文字が小さくなり、ページ数も倍になりますが、「冒険者たち」は小学生が大好きな冒険モノ。すぐに物語に引き込まれていくでしょう。楽しみながら読んでねー!