英数国理社の学力よりもメタ認知能力が、テストや受験を左右する。

2016年6月2日

最近、というよりも新年度が始まってからずっと、中2生に毎日のように叱っています。例年は、まだまだ小学生気分を引きずっている中1生や、受験生なのに中2気分のままの中3生の方が注意されることが多いのですが、今年は圧倒的に中2生の一人勝ちです(悪い意味で)。

中2生が毎日毎日注意される一番の原因は、メタ認知能力に欠けている生徒が多いからです。一人二人の話ではなく、クラスの半数以上がメタ認知能力が通常の中2生よりも低い状態です。

「やらなくてもできると思っていました」と言う子

中2生にやらない言い訳を聞くと、「やらなくてもできると思っていました」と答える生徒が必ずいます。この言葉だけ客観的に聞くと、なんと傲慢な子どもだろうと思われるかもしれませんが、彼ら彼女らの名誉のために言うと、決して傲慢だからそのように思っているのではないのです。驚くことに、全く素直でイノセントに、やらなくてもできると思い込んでいるのです。

もちろん、本当にやらなくてもできるレベルの高学力層はこういう言い訳はしません。高学力層がやらなくてもできると思ったことは、やらなくても本当にできてしまいます。高学力層は、自分の能力を客観的にきちんと把握し認識している。目の前の問題なり課題が、自分の能力の領域内であるのか領域外にあるのか、非常に正確に見極めて行動することができる。つまり正確なメタ認知能力があるのです。

一方、中途半端な学力層の子は、このメタ認知能力が欠如しています。目の前の課題が自分の能力の領域外であるのにも関わらず、領域内にあると思い込んでしまうので「やらなくてもできると思っていた」という事態に陥ってしまいます。繰り返しますが、彼らに奢りや悪意があるわけではなく、自分自身の状況と現状を客観的にジャッジする能力に欠けていることが原因で、こういう事態になってしまうのです。

課題が期限までに終わらない子

メタ認知能力の欠如からくるものとして、他のよくある事例が「課題が終わらない」というものがあります。

メタ認知能力が欠如している子は、量や時間を推し量ることも苦手です。課題の総量はあとどれくらいあるのかという量の認知。課題を一つ終わらせるのに、自分の力では一体どれくらいの時間がかかるのかといった時間の認知。この2つを正確に認知していないので、残り時間を逆算することができません。その結果、課題をズルズルと先延ばしにし、もう間に合わないというところまで来ても、それに気付くことなく「まだ何とかなる」と考えてしまい、最終的にやっぱり終わりませんでしたとなってしまいます。

学校の定期テストや受験勉強は、メタ認知能力の差に依るところが非常に大きいということは、これまでも何度も書いてきました。

(参考):メタ認知力の差こそテストの点数の差。第2回定期テスト結果を公開します。
メタ認知力を鍛えないと学力アップは難しい:メタ認知力を高めるために実践している4つのこと

ハッキリと言いますが、メタ認知ができない子は勉強に不向きです。逆に言うと、勉強ができるようになりたいと思うのなら、英数国理社の能力と同時に、メタ認知能力も鍛えるべきなのです。

メタ認知能力は、先天性のものではなく後天性であるといわれています。つまり、色んな方法で鍛えることができるのです。ここでは、テストのメタ認知を高める為にできる方法をまとめてみます。

テストでのメタ認知を高めるために

自分の実力に即した目標点設定

メタ認知力を高めるために欠かせないのは、自分を客観視することです。うちの塾では定期テストの目標点を必ず書かせますが、これをやると、必ず「目標は全部100点!」などのような壮大で現実離れした目標を立てる生徒がいます。もちろん、全部100点をとろうとする意気込みは素晴らしいのですが、逆に言うと、現時点で自分がテストで何点取れるかがきちんと分かっていないということでもあります。

メタ認知能力が高い子にこれをやらせると、目標点と実際の点数にあまり差がありません。自分がテストで何点取れる学力があるのかを客観的に把握しているだけでなく、次のテストではどんな問題が出るのか、それは自分の能力の領域内か外か、そこまで客観的に嗅ぎ分けることができます。そして、自分の能力の領域外にある部分が大きい科目から順々に責めていくのです。

メタ認知能力が低い子に対しては、現実と理想との間でどう折り合いをつけるのかという視点から、目標点を試行錯誤させることからはじめます。適当に目標点を考えている限り、自分の能力を客観的に直視することはできません。

必要なのは他者目線を持つこと

メタ認知能力が高い生徒と低い生徒の一番の違いは、他者目線を持ちながら試験勉強をしているかどうかということです。テストだけに限らず、多くの場合、相手の立場に立って考えることができれば、それだけ物事を上手に進めることができます。

テストの場合の他者目線とは、作問者である先生です。成績の良い生徒は、先生の癖や性格・過去のテストを考えた上で、「この先生はどんな問題を作ってくるだろう」と想像し、対策することができます。一方、成績の悪い生徒やメタ認知能力が低い生徒には、この他者目線を意識した学習がほとんどありません。自分が覚えようと思えば覚えるし、自分が必要ない・やりたくないと思えばやらない。他者目線に欠け、勉強の基準が「自分」という極めて主観的な物差しであるため、気分によって左右されるし、これくらいで良いだろう、やらなくてもできるだろうという、全く根拠のない甘い考えに走ってしまうのです。

返却後の冷静な分析

テストが返却されたときに、冷静な分析ができるかどうかも、メタ認知能力にかかっています。メタ認知能力の低い人は、自分の嫌なものをできるだけ見たくないので、返却されたテストと冷静に向き合おうとしません。もしくは、点数の良いテストだけ嬉々として分析し、点数の悪いテストはカバンの中に丸めたまま放置です。

ミスの種類は何か。ケアレスミスなのか、理解不足によるミスなのか。もしケアレスミスなら、なぜケアレスミスをしてしまったのか。慌てて計算したから?字が汚かったから?計算力の欠如?集中力が切れたから?理解不足による間違いなら、じゃあどうすればテスト前に理解できたのか。そもそも理解できるレベルの問題ではなかったのか。どのような対策法があったのか。

などなど。このように、自分のテストを一切の主観を入れず、客観的に的確に分析すること。主観を入れないとは、「頑張ったけれどダメでした」「努力が足りませんでした」などのような根拠のない精神論に走ることです。精神論に走る人の多くは、メタ認知能力に欠けています。冷静に分析できないから、精神論で片付けようとするのです。

まとめ

このサイクルを繰り返していくと、テストに対するメタ認知が高まっていき、必然的にテストの結果は改善されることになります。

ちなみに、成績がいい子悪い子という表現をしてきましたが、メタ認知能力と偏差値は必ずしも比例するわけではありません。しかし1つ言えることは、受験において、メタ認知能力が低いのに偏差値が高い子よりも、メタ認知能力が高いのに偏差値が低い子の方が、圧倒的に有利だということです。前者は自分の偏差値と同等の高校に行くことは難しいですが、後者は自分の偏差値以上の高校にほぼ進学しています。後者は低い偏差値を高いメタ認知によってカバーできるからです。

メタ認知能力は訓練や環境次第で鍛えられます。自学は、子どものメタ認知を鍛える強力なツールの一つになり得るものです。