H28年度横浜翠嵐高校特色検査研究と分析:県下No.1の名にふさわしい圧倒的な難易度と質。

特色検査研究の第8弾は、横浜翠嵐高校です。距離的な問題から小田原地域から翠嵐を目指す中学生が皆無に近い状態なので、このブログで翠嵐の特色検査を扱うのが今回が初となります。

ここが他の特色検査と違う!横浜翠嵐ならではの2つの特徴

今回は書くことが多いので、早速主題に入ります。

横浜翠嵐の特色検査は、大問2題からの構成です。制限時間は60分でH28年度の全設問数は16問。他の高校のように、大問2題の前半文系・後半理系などというような、明確な文理の括りがある訳ではありません。どちらの大問にも文理それぞれが非常にバランスよく出題されています。

ただ、各科目のバランスや大問2題構成などは、横浜翠嵐の特色検査の特徴の表の面にすぎません。翠嵐の特色検査の本当の特徴は、これとは別のところにあるのです。

特徴1:圧倒的な文字量が受検生を苦しめる

課題1は江崎保男著の「自然を捉えなおすー競争とのつながりの生態学」から抜粋された、A4用紙で2ページ以上の文章を読むことから始まります。前回の記事でもその一段落を抜粋しましたが、大人でも非常に読みづらい難解な文章です。しかも長い。これをまともに全て理解しようとしながら読むと、読んで理解できるかどうかは別として、普通の中学生ならリード文を読み終わるだけで10分はかかるでしょう。課題2のリード文は、酒井邦嘉著の「科学者という仕事」からの抜粋。こちらは課題1のリード文に比べると、若干読みやすい文章になっています。長さはA4用紙で2ページ弱。

文字数が多いのは、リード文だけではありません。リード文から展開される各設問ごとの問題文もこれまた長い。英文に至っては、中学校で習わない単語も数多く平気で使われていて、それらは問題の最後に『単語集』としてアルファベット順にインデックスされてまとめてあります。この『単語集』のスタイルはもはや翠嵐の特色検査の定番になっていますが、英単語の語彙数が少ない受検生にとっては、『単語集』と本文をいちいち行ったり来たりしながら読み進めなければならず、かなりの時間を要すると思われます。

横浜翠嵐だけでなく、他の高校の特色検査も、リード文や問題文が長くなる傾向があります。特色検査とは、通常の学力検査のように、これまで学習してきた内容を、解法パターンや知識を駆使して解く試験ではありません。中学生が今まで考えたことも勉強したこともないような初見の内容を問題の素材とし、見新しいものに対する問題解決能力を測るテストです。初見の内容でも中学生が解けるように十分な説明を加えなければいけないために、どうしてもリード文や問題文が長くなります。

そのような特色検査の性質を踏まえても、横浜翠嵐の特色検査は他の高校に比べると、受検生に読ませる分量が突出しています。普段から文章を読み慣れていない受検生にとっては、問題を解くという行為に行き着く前に、問題を読み込んでいくだけでヘトヘトになってしまうでしょう。

特徴2:時間がかかる論述記述のオンパレード

2番目の特徴は、論述式の問題のオンパレードだということです。これは他の高校の特色検査に類を見ません。これらの論述問題の難易度はかなり高く、特に設問の文章をきちんと読み込まないと、何が聞かれているのかということすら理解できないでしょう。単純な知識や解法パターンで解けるような論述ではなく、設問の意味を理解し、また問題によってはリード文の文章をきちんと把握し、なお色々な知識と融合させて熟考しないと解けません。浅い思考では、何をどう論ずればいいのか、何をすることを求められているのか分からず、手も足も出ないでしょう。

さらに翠嵐の論述問題を難しくしている原因があと2つあります。
それは、

  • 文字数の制限がほとんどないこと。
  • 複数の論述を必要とする場合が多いこと。

です。

他校の特色検査の論述問題の多くは、「○○字以上○○字以内で説明せよ」のような文字数制限があります。文字数制限があると一見難しく思えますが、これにより説明する文章量の目安がつくので、実は受検生にとっては簡単なのです。もっと親切(?)な場合、「○○という言葉を必ず使って」などの条件も加わります。このように、論述問題は、条件がたくさんあればある程解きやすくなるのです。しかし、横浜翠嵐の場合、H28年度に出題された6題の論述問題中、文字数制限があるのは2題のみ。他の4題は、解答用紙に罫線が引いてあるのみです。受検生にとっては、どれくらいの長さで、どこまで説明すればいいのか皆目検討がつきません。

さらに、論述問題中に「○○について2つ答えなさい」と、複数の答えを要求してくる問題も2題あります。1つを思考するだけでも大変なのですが、2つとなると頭をそうとう捻らないと対応できません。H28年度だけでなく、複数回答を要求する問題はこれまでも毎年のように出題されています。1つの事象について、多様な考え方を求められているのです。

翠嵐受検生の半数以上が5割以下:5割を越えるためにできること

冒頭にも述べましたが、横浜翠嵐の全設問数は16問です。小田原の24問や平塚江南の21問などと比べると、横浜翠嵐は決して問題数は多くありません。しかし、上記2つの理由で、16問に真っ正面から向き合い、制限時間内に満足に解答しようとするとまず時間が足りなくなります。

以前、高校別の特色検査平均点についての記事を書きましたが、この記事のサンプル数33名分だけでは不十分と思い、さらに情報を集めてH27年度の横浜翠嵐受検生111名分の開示得点を調査してみました。すると、111名分の平均点は45.8点。その内訳は、30点以下が5.4%、30点代が22.5%、40点代が39.6%、50点代が21.6%、60点以上が10.8%でした。ちなみに、この111名の90%以上が合格者の開示得点です。つまり、翠嵐に合格した生徒であっても、半数以上の受検生は半分も取れていないということになります。

H28年度は、H27年度に比べると若干難易度は易しくなっているのでもう少し平均点は上がるとは思いますが、それでも劇的に上昇することはないでしょう(調査ができ次第また記事にします)。もちろん5科目の学力検査の得点にもよりますが、5割を越えることができれば合格にかなり近づくのではないでしょうか。

では、横浜翠嵐の特色で5割を越えるためにはどうすればいいか。私なりの見解を書いてみたいと思います。

リード文の圧力がかからない問題から解く

横浜翠嵐の特色検査は、上記で述べたようにリード文こそ難解で長いものですが、リード文を読んで完璧に理解していなくても、設問が理解できれば解ける問題も多く含まれています。難易度にかなりの違いはありますが、この辺りは平塚江南の特色検査のつくりと似ています。

今年のように、リード文が難しい場合、まずは無理をしないで設問を読み、リード文の理解無しでも解ける問題から解いていくべきです。ちなみに、H28年度の全16問中、リード文をきちんと理解しないと解けない問題は3問しかありませんでした。先ほど、「これをまともに全て理解しようとしながら読むと、読んで理解できるかどうかは別として、普通の中学生ならリード文を読み終わるだけで10分はかかる」と書きましたが、実はリード文を全て理解する必要はありません。

英語の長文読解のように、リード文からではなく設問文から読み始め、リード文の理解なしでも解ける問題からどんどん解いていく。そして時間が余ったり、解ける問題がなくなったら、リード文の理解が必要な問題に着手する。横浜翠嵐受験生であれば、この解き方はもはや常識かもしれませんが、5割を越えるためには鉄則です。

難関国私立を受験できるレベルの英語の語彙力を身につける

先ほども述べたように、英語は問題の後ろに『単語集』が添付されていますが、『単語集』と本文の行き来に割いている時間はありません。単語集にできるだけ頼らない語彙力を身に付けておきましょう。

最近の横浜翠嵐の受検生の多くは、オープン入試で難関国私立の1つや2つを受験しているとは思いますが、難関国私立レベルの勉強をしていると、単語集に頼らなくても英文を理解できる力はつきます。ちなみに、5割のラインを突破するには英語系の問題は絶対に正解しなくてはいけません。横浜翠嵐と言えども他の特色検査校と同様に、英語の問題は他の問題に比べると比較的易しいからです。

小論文を書く練習

横浜翠嵐の特色検査は、テクニックだけでは通用しません。テクニックの前に、まず盤石なる言語能力が必要です。

リード文を読まなくても解ける問題は多いですが、上記のように翠嵐の場合、リード文だけでなく設問文も容易ではありません。設問文の中に、問題を解くためのいくつもの条件やヒントなどの情報が書かれています。また、論述問題に関しては、高度な書く力がないと解答できません。「難解な文章を読む」「思考を正確に文章で表現する」という、高い言語能力が絶対的に必要になります。

翠嵐を受検しようとする人は、こと「読むこと」に関しては高い言語能力を持ち合わせている人が多いと思います。しかし、盲点は「書くこと」です。「書く」勉強をおろそかにしていると、いくら読書量が豊富で読む能力に長けていたとしても、学力はいずれストップし、だんだんできなくなってしまいます。翠嵐の特色検査どころではなくなってしまうでしょう。

翠嵐の特色検査対策としての「書くこと」を鍛えるためには、「論文系の小論文」をたくさん練習し、それを人に添削もらうことが一番でしょう。横浜翠嵐の特色検査だけでなく、東京都立高校の前期試験の小論文も、「書くこと」に対する練習の良い素材となると思います。

参考)
・都立青山高校→http://www.aoyama-h.metro.tokyo.jp/mokuji14.htm
・都立新宿高校→http://www.shinjuku-h.metro.tokyo.jp/cms/html/entry/15/6.html
・都立立川高校→http://www.tachikawa-h.metro.tokyo.jp/mysite1/sub14.html
・都立戸山高校→http://www.toyama-h.metro.tokyo.jp/mondai/mondai.html
など。

まとめ

さすが神奈川県公立高校の中でNo.1の高校です。問題の質や難易度・解答方法全て群を抜いています。60分間で全て解くのは大人でも厳しいでしょうね。お恥ずかしながら、全て解き終わるのに私も60分間いっぱいかかってしまい、それでも間違えた問題がありました。

特色検査は文系が得意である方が有利だとこのブログで何度も書いてきましたが、今年の横浜翠嵐の場合、逆に理系問題の方が解きやすかった(課題1の設問4、課題2の設問2・設問3・設問4)と思います。それくらい、英語以外の文系問題の難易度が高いということです。つまり、文系理系の能力がどちらも高いレベルでバランスよく備わっていないと、翠嵐の問題は解けません。

たくさんの本を読んで言語能力と知識を養い、難関国私立の問題を解くのにも耐えられるような各科目の思考力を身に付け、書く練習を怠らないこと。常にアンテナを張り巡らせ、思考することをやめないこと。思考すること自体を楽しめること。しいて言えば、これが翠嵐の特色検査対策でしょうか。

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