どうしたら芽生える?受験生の自覚

2012年7月9日

このエントリーでも少し触れたが、保護者の方から一番多い相談が、「うちの子には受験生としての自覚が全くありません。どうしたら良いでしょうか。」という類いのもの。特に中3の夏から秋くらいにかけての時期、こういった相談が最も多くなるが、たまに中2の保護者からも同じような質問を受けることがある(いやいや、中2のうちから受験生としての自覚を持っている子はほとんどいません。これは保護者が先走り過ぎ)。さすがに秋以降になってくると、保護者の方からのこういう相談は減ってくる。つまりこの頃から子どもがだんだんと受験生としての自覚を持ち始めるのだが、では受験生の自覚というのは、いつどのようにして芽生えるのだろうか。今日はそのことについて考えてみることにする。

結論からズバリ言うと、子ども自身に受験生としての自覚が芽生えるのは、ほとんどの場合が「志望校に落ちるかもしれない恐怖を覚えたとき」だ。人間にとって、不安や恐怖心は大きな原動力となる。なかなかダイエットできない超メタボ体型のお父さんが、会社の健康診断で医者から「このままじゃあなた病気になりますよ」と指摘された途端、いきなりダイエットに励むのと全く同じ。特に、高校受験は15歳という子どもがまだ成熟しきっていない時期にやってくる。成熟していない子どもにとっては尚更、「志望校に合格したい」という前向きな気持ちよりも、「志望校に落ちるかもしれない」という不安や恐怖心の方が大きな原動力となる。

しかし、厄介なことに、子どもは人生の経験値が少ない分恐ろしいほど能天気で、現実に直面するまでは「まさか自分だけは不合格になるまい」と思い込む節がある。つまり、恐怖など微塵も感じていないばかりか、どこから来るのか分からない自信さえ抱いている、それが夏から秋にかけてのだいたいの受験生の心情なのだ。

受験生としての自覚を芽生えさせるには、「志望校に落ちるかもしれない」という強烈な不安や恐怖心を抱かせることであるが、だからといって親が「あなたこのままでは志望校に落ちるわよ!」と事あるごとに言ったって、ほとんどの場合は無意味である。幼稚園児じゃあるまいし、親にいくらギャーギャー脅されたって15歳の子どもは怖がりません。たいていは「うっせーな」って親子喧嘩になって終わり。

↑この絵本すごく売れているらしい。なんでも、これを読み聞かせられた幼稚園児が素直に言うことを聞く効果があるのだとか。

親がヤバいことを教えるのではなく、受験生本人が「ヤバい」と気づく。これが一番大切です。一番有効な手段は、学校の先生や塾の先生に、厳しい現実を突き付けられること。子どもにはこれが一番効きます。内申点や模試の成績から、客観的かつ冷静に、今のままでは落ちる可能性が多いにあるということを、具体的な数値を交えて話をされると、「さすがにこのままじゃマズいだろう」と恐怖心を抱くようになる。そうするうちに、だんだんと受験生としての自覚が芽生えてくるのです。ただし、大前提として「絶対に行きたい志望校」が子ども自身にあること。高校なんてどこでもいいやって子には、当たり前だけれど恐怖心は生まれません。

でもやり過ぎは禁物。特に弱気な性格の子どもの場合は注意が必要だ。そういう子は、恐怖心が原動力になる前に、恐怖心から逃げ出す道を選択しかねない。学校の先生でも塾の先生でも、進路指導が上手な先生は、一人ひとりの生徒の性格や状況の微妙な変化を観察しながら、いい塩梅でその子の恐怖心をコントロールする。これは正直プロしかできない技だと思ってもらっていい。

どうしても受験生としての自覚を早く芽生えさせたいなら、入試模試などをどんどん積極的に受けさせてみて、現実を分からせるのも手。もしくは、塾の先生にコッソリ相談して、適度に恐怖心を植え付けてもらうのも、奥の手です。