神奈川県公立入試を、得点分布から分析してみた。(第3回「国語編」)

2014年4月23日

少し間が空きましたが、「神奈川県公立入試〜」シリーズの第3回を書いてみます。今回は国語編。

記述問題が追加された新入試制度初年度

昨年の新入試制度初年度での国語の大きな変化と言えば、何といっても記述問題の追加。50字以内で書く要約問題が1問、60字以内・80字以内で記述する2問の資料読み取り問題が新たに登場した。

それ以前の神奈川の国語の入試問題は、45字以内の記述問題がたった1問で、漢字の書き取りを除けば、その他はほぼ記号選択問題という、何とも受検生にとってサービス精神溢れる易しい問題だった。

最初に断っておくけれども、記述問題が増えたといっても、他の都道府県と比較してみると難易度は高くはなく、むしろまだまだ易しい方である。ただ、選択問題に慣れきっていた神奈川県内の受検生にとっては、いくら易しい問題でも論理的に「記述する」ということに不慣れなのだ。

学校でも、きちんとした文章読解の解き方、記述問題の解き方をほとんど教わってこなかっただろう。「国語はセンスで解く」という、何ともナンセンスな解き方がまかり通っていたし、これまでの選択肢ばかりの入試問題ではそれでも通用していた。それが、記述問題の登場によって、センスだけでは通用しなくなったのだ。

data_japanese右の黄緑(2012年度)と赤(2013年度)のグラフを見比べてほしい。2012年の黄緑のグラフでは、9割以上が全体の約10%、8割〜9割が全体の約21%と、約30%以上の受検生が8割以上をとっていたが、2013年の新入試制度になってからは、9割以上が全体の5%、8割〜9割が全体の16%に落ち込むこととなる。

さらに平均点が下降した2014年度の国語

そして新入試制度2年目の今年。結果から言うと、初年度の2013年度よりもさらに平均点が落ち込むこととなる。
もう一度上のグラフを見ていただきたい。青色が2014年度のグラフだが、9割以上が1.5%まで落ち込み、8割〜9割の階級でも9.6%に落ち込んだ。つまり、8割以上を取れた受検生が、全体の約11%程度しかいないということである。

なぜ今年は去年よりも点数が落ち込んだか。
ちなみに大きな問題傾向は昨年度と同じで、語句・古文・小説・評論・作文の順は変わらないので、見た目には大した変化はないように思える。ただ、内容を見てみると、「国語はセンス」で解いていた受検生にとってはやはり解きにくい問題が多くなった。

まず、2番目に出題された古文。昨年度までの古文は現代語訳が多く、ちゃんと古文を勉強してなくても現代語訳を頼りに何となくは読めていた。ところが、今年の現代語訳は最初の1行だけとなり、現代語訳を頼りに読むことができなくなった。体系的にしっかりと古文を学んできた受検生にはほとんど問題がないレベルだが、センスのみで解いてきた受検生にとってはかなり解きにくくなっただろう。

さらに、論説文でも、谷崎潤一郎のやや難しめの文章が引用された。断っておくが、文章は難しくなったものの、設問レベル自体はたいして難しくはなっていない。しかし、センスのみで解いている受検生には、文章が読みにくいということは死活問題である。
一方で、国語の文章読解の論理的な解き方の訓練をきちんと積んできた受検生にとっては、文章が難しなったとしても、設問レベル自体が難しなっていない限り、そこまで痛手になることはない。

つまり、新入試制度になってから、数学や英語などの他の科目と同じように、国語にしっかりと時間を割き、「科目」としての勉強を積み上げてきたかどうかが、得点が取れるか取れないかの分かれ目になっている。

これからの入試国語の対策法

入試国語の対策法として強く主張したいのは、「センスで解く国語から脱却せよ」ということだ。

受験生だけでなく、受験生の保護者の方も、ありえないことに学校や塾などの教育関係者の一部にも、国語をセンスの問題と片付けて、「国語は勉強しても無駄」とばかりに、国語に対して何の対策も講じない人が目立つ。勉強したとしても、漢字をちょろっと覚えるだけなど。漢字の暗記=国語の勉強とはき違えている人のいかに多いことか。
国語も、数学や英語と同じ科目の一つだ。それだけでなく、国語は言語能力を司る科目である性質から、国語を鍛えることは、他の全ての科目を鍛えることにも通じる。

入試制度が変わり、センスだけで解く国語ではもう通用しない時代になってきている。読解問題の解き方、古文の知識や読み方、国文法などの知識問題を、時間をかけて体系的に学んできているかどうかが大切となる。

ただ、悲しいことに、国語は勉強したからと急に成績がよくなるわけでもないし、母国語だからこそ短期間で身に付くものでもない。ハッキリと言うが、中3生から慌てて国語を勉強しても、正直時すでに遅し。トップ校志望者ならば、できれば小学生の頃から、遅くても中1生の頃からは、国語の勉強を始めておきたい。

まとめ

新入試制度の特徴の一つが、「国語力」だと思っている。国語だけでなく、英語数学理科社会であっても、国語力が無いと「何が問われているのか」すら把握できない問題が多くなった。言い換えれば、今の入試制度は、国語力が抜群の受験生に非常に有利にはたらくということだ。

うちの塾では国語の重要性を小学生から説いている。定期テスト対策や漢字の学習だけに甘んじるのではなく、国語を学問の一つとして、初見の文章を読み解き進める訓練をコツコツとやっている。

この入試改革を受け、受験生のみならず学校や塾などの教育関係者がこれまで以上に「国語」の重要性を再認識し、センスに頼らない国語力を構築するキッカケになって欲しいと心から願っている。