県下屈指の公立難関校、湘南高校の「伝統の力」とは:湘南高校を訪問したのでそのご報告。

県下屈指の公立難関校である湘南高校。

毎年、東京大学などの難関国立大学に多くの卒業生を送り出しているだけでなく、元東京都知事の石原慎太郎氏やノーベル化学賞を受賞した根岸英一氏のように、経済界・政界・官界・学界などにも人材を多く輩出している湘南高校の実際に迫るべく、同校の校長先生・副校長先生にお話を聞いてきたのでその内容をまとめてみることにしよう。
※注 長文です。お時間のある人だけどうぞ。
shonan

湘南高校の最大の魅力はその「伝統の力」

「人を育てる教育」で県立高校の王道を貫く

まずは時乗校長先生のお話を伺う。時乗校長先生は、今年度の4月から新しく湘南高校の校長として秦野高校から赴任された。
湘南の最大の教育方針は、「総合的な人間力の育成」とのこと。高い学力を養って難関大学進学を目指すことはもちろんのこと、湘南高校最大のメインイベントである体育祭をはじめとする学校行事、兼部を含めると加入率が100%を越す部活動などにも全力で取り組むことで、目先の大学進学のみならず、大学進学後に社会のリーダーとして世界で活躍できる人を育てることが、昔から変わらない湘南高校の教育方針であるという。

時乗校長:「“人を育てる”という教育は、昔から県立トップ校の王道です。その王道の教育を、湘南高校は今も変わらず守り続けているのです。」

大正10年に開校し、今年で創立93年を迎える湘南高校。開校からどんなに時代が移ろうとも、決して変わることなく貫いてこられた教育方針の根幹が、湘南独特の伝統が今も受け継がれている一番の要因だと感じた。

先輩から学び、先輩を超える。

時乗校長:「“先輩を超えたい”という想いが、うちの生徒の最大のモチベーションとなっています。」

部活動や体育祭などの行事を通じて、先輩後輩という縦の結びつきがとても強い湘南の生徒ならではのことだろう。湘南高校の生徒は、先輩の部活動・体育祭・大学進学の実績を超えてやるという気持ちを最大のモチベーションに頑張っているという。高校生にとって最も身近な存在である先輩の、東大合格に向けて果敢に挑戦しようとしている姿、勉強と部活動をしっかりと両立するケジメのある姿、伝統行事の体育祭を全力で創り上げようとする姿が後輩達に受け継がれ、さらにそれよりも良いモノをと後輩達が磨きをかけようとすることによって、湘南高校の伝統が途切れることなく代々受け継がれているのだろう。

これだけの進学校だ。東大・東工大・一橋大のような難関大学に進学したOBや、各界のリーダーとして活躍されているOBがゴロゴロいる。在学生の縦関係だけでなく、こうしたOBと在学生の結びつきも非常に強いのも湘南高校ならでは。

時乗校長:「例えば、運動部の部活動で夏合宿がありますが、東大や東工大などに進学したOBたちは運動部の練習を見た後、夜にはしっかりと学習タイムを作って在学生たちの勉強を見てあげます。これらも、在学生の学習にとても役立っているようです。」

Always do what you are afraid to do.

湘南高校の合い言葉になっているのが、”Always do what you are afraid to do.”
日本語にすれば、「最も困難なことに常に挑戦する」ということ。この合い言葉が生徒にも根付いているようで、例え困難でも第一志望を変えることなく挑戦し続けることを大切にしているという。その結果、今年の高3生の東大受験希望者は100名近くにものぼるとか。

時乗校長:「もちろん、現役で合格することに越したことはありませんが、絶対に現役で合格させようという考えはあまり持っていません。現役で受かるところに合格するよりも、例え浪人してでも第一志望に向けて頑張ることの方が意義があると思っています。1年くらいの浪人なんて、大学進学後の長い人生から考えたらたいしたことありません。」

実際、湘南高校の生徒はほとんど指定校推薦を使用しないという。指定校の枠で進学するのは毎年4〜5名ほど。早稲田や横浜市立大に進学するとのことだ。例えば慶応大学からいろいろな学部の指定校推薦のオファーがあるが、誰も推薦枠を使って行こうとしないため、指定校枠をすべて慶応大学にお返ししているとのこと。

行ける大学ではなく、苦しんでもチャレンジして自分が本来行きたい大学を目指す。県下屈指の公立高校らしい姿勢だと感じた。

湘南生にとっての「勉強」とは

どんな行事でも、勉強が大前提にある。

湘南生は、どんな活動をすることにおいても勉強が大前提にくるとのこと。

例えば、湘南高校で一番の行事といえば体育祭。毎年、9月に行われる体育祭に向けて、1年も前から準備をしているという。湘南高校歴史館で体育祭のビデオを見せてもらったが、少しビデオを見ただけでも団結力と完成度がハンパない。創作ダンスは一糸乱れぬ完成っぷりだし、体育祭で使われている小道具も恐ろしいほどよく出来ている。「湘南=成績が良いマジメな生徒だけが行く所」という間違った認識は、この体育祭を一目見るだけで吹っ飛ぶだろう。

しかし、湘南の体育祭がスゴいのは、完成度が高いことだけではない。湘南生にとっての体育祭の「完結法」だ。なんと、湘南生にとっての体育祭は、「大学実績をあげてから」初めて完結されるという。つまり、どれだけ3年の体育祭が成功したとしても、大学実績がボロボロでは体育祭は“失敗”だったと捉えるという。

恐るべし!湘南生。

部活を頑張ったり学校行事を頑張ったりするのは、勉強をしっかりとすることが大前提。勉強を疎かにして、部活や学校行事だけに精を出すのはオカシイと考える。それこそ湘南高校が掲げる真の「文武両道」だ。

もがき苦しみながら、学力を養っていけ!

小田高とは対照的に、湘南高校ではいわゆる週末課題のようなものは課さないようだ。必要な問題集や教材は、予め全て与えておいたうえで、範囲を区切ってテストがたくさん行われる。それぞれのテストには合格ラインが設けられていて、合格ラインに達していない人は合格できるまで何度でも追試を受けるシステムで、生徒の学力を底上げしているという。うちの塾の再試制度と全く同じシステムですね。

時乗校長:「他の学校のように補習をしたり週末課題を出したり、生徒が転ぶ前にこちらから手を差し伸べない。湘南生といっても、1年生の大半は“正しい勉強”が何なのか分かっていません。そんな彼らに、どうしたら追試に受かるかということを体感してもらうことから始めます。中学校では優等生だった子も、湘南ではそうはいきません。大概がもがき苦しむ。その中で、正しい勉強法を覚え、学力を養っていくのが湘南のやり方です。」

湘南ほどのトップ校に必要なのは、手厚い補習や指導などではない。困難や苦労に一つずつ打ち勝っていきながら成長していく、そんな環境なのかもしれない。

海外の名門大学との交流

時乗校長:「生徒たちには、湘南を1つのステップとして海外へ出て行って欲しい。湘南高校を卒業後、日本の大学だけでなく海外の大学も進学の選択肢となるようにしていくつもりです。」

とおっしゃるように、3年前から海外研修を積極的に取り入れている。しかも、その行き先がやっぱり湘南!
ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学、オックスフォードやケンブリッジ、UCLAなど、海外の名門中の名門大学に出向き、現地の大学生と交流しているという。これもすべて湘南のOB会である湘友会の取り計らいという。恐るべし、湘南のOB会!!

普通の高校生では体験できないようなことを、湘南生は体験できる。それってものすごく貴重だし、確実に人生においてのアドバンテージになる。今後もこうした海外研修を増やし、グローバルに活躍できる人材を育成することに力を入れていくとのこと。

入試について

特色検査が湘南だけ1割に設定しているワケ

他のトップ校が軒並み特色検査を2割に設定しているなか、湘南はあれだけの難易度の特色検査を実施しておきながら、評価基準は全体のたった1割に設定している。

時乗校長:「なるべく特色検査で順位の逆転を起こしたくはないんです。あくまで、5教科の学力検査の勉強が基本だと思っています。5教科の点数がしっかりとれることの方が重要です。特色検査を2割にして、5教科の勉強を疎かにしてもらっては困りますので、湘南は1割にしています。」

とのこと。湘南の特色について、時乗校長が「うちの特色、あまり難しくありませんしね。」とおっしゃっていたことに驚いた。いやいや、十分難しいですって。そうおっしゃるということは、湘南受験生ともなると、あの難易度の特色でもしっかりと点数をとってくるということだろう。

ただ、時乗校長がおっしゃったように、特色検査1割の湘南は、特色の点数よりも5科目の点数の方がはるかに大切。湘南受験生は、特色のことはちょっと置いてでも、5科目で450点くらいとれるような勉強をしておこう。

面接試験について

面接については、小田高の校長先生と同じスタンス。「みんながしっかりと準備をしてくるので、差を付けたくてもなかなか差がつかないのが現実。標準偏差は限りなくゼロに近い。」とのこと。面接で大きな差がつくことはまずなさそう。

求める生徒像

時乗校長:「いろんなことに興味をもち、どんなことにも100%力を注げる子に来て欲しい。勉強だけ、部活だけ、行事だけ頑張るという子は合わないだろう。勉強にも部活にも行事にも、興味があること全てに全力で頑張れる子を求めています。」

これまでのお話を聞いていたので、時乗校長の求めている生徒像には納得がいく。先ほども書いたように、「湘南=クソ真面目なガリ勉ばかり」というイメージは皆無。むしろ、勉強だけしか頑張れないクソ真面目タイプはこの学校には合わないかもしれない。

勉強を基本として、興味のあることに何でも頑張れる子、多少の困難にも負けないようなガッツを持った子がこの学校にはとても似合う。そんな気がした。

まとめ

めちゃくちゃ長文になったが、最後までお読みいただいてありがとうございます。ここには書ききれなかった事もたくさんありますが、キーボードを打つ手が疲れてきたのと、興奮してキーボードを打っているせいかdeleteキーが壊れてきたのでこの辺で切り上げます。

ただ一言でまとめるとすれば、「湘南高校を作り上げているのは、昔から脈々と受け継がれてきた伝統の力である」ということ。今回の訪問で、こんなに素晴らしい伝統の一部となれる湘南生を本当にうらやましいと思った。校長先生と副校長先生のお話を伺い、湘南高校歴史館を一通り見学させてもらったが、そのたった1時間30分でたちまち湘南の大ファンになってしまったほど。

もちろん、湘南に合格するのは容易なことではない。だけど、例えもがき苦しんででも(湘南の指導方針のように)目指す価値のある高校だと断言します。

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