だから私は大手塾を辞めたのです。無意味な校門前激励について。

入試当日の校門前激励について、Yahooのトップ記事に上がっていました。
受験生激励大声やめて! 入試会場で塾関係者ら過熱

倍率関係でこのサイトを訪れている人が多い中、関係ない話をして非常に申し訳ないのですが、これについて言いたいことがたくさんあるので今日だけはお付き合いください。

自分がかつて大手塾に勤めていた頃も、入試当日の校門前激励がありました。でも、上からの命令でも「嫌なものは嫌だ」だと貫き通す組織人不適合者の私は、いくら行けと命令されても一度も校門前の激励に行ったことはありません。校門前激励に行かなかった代わりに、朝に受験生の最寄り駅で自分の塾生を見送りにいったことはありますが。

私が校門前激励に行かなかった理由はいくつかあります。
まず1つ目は、単純に無意味だからです。だって無意味じゃないですか。入試当日に、しかも校門の前で塾の先生に大声で激励されたいですか?入試当日は、玄関先で親御さんに「頑張っておいで」と静かに送り出してもらえるだけで十分です。そこからはたった一人の戦いです。スポーツの世界じゃないんだから、いくら塾の先生と言っても外野が出る幕はありません。

2つ目は、校門前激励に行くのは多くの塾の場合、「トップ校限定」だからです。塾の先生は、入試当日全ての学校の校門前で塾生に激励しているのではありません。トップ校の校門前で、トップ校を受験する生徒だけに、激励しているのです。当然、どこの塾にもトップ校以外を受験する生徒もいるわけですが、そういう子たちは無視です。つまり、同じ塾に通っている塾生の間で、トップ校受験生は当日に手厚い激励を受け、トップ校以外の受験生は無視されるということになります。トップ校を受ける生徒は励ましてくれるのに、トップ校じゃないと誰も来てくれないっていう事実を知ったら悲しくないですか?

これが私がいくら命令されても校門前激励に行かなかった一番の原因です。だから、激励に行くのなら皆に会える確率の高い最寄り駅にしました。トップ校を受ける子もそうでない子も、皆それぞれ精一杯頑張ってきた結果の受験です。トップ校の子だけが頑張っているんじゃありません。

皆さん薄々感じていると思いますが、校門前激励って結局自塾の宣伝が一番の目的なんです。入試当日の受験生にとって一番大事な日にまで、自塾の宣伝のためにトップ校受験生を利用するって考え方があざといというかなんというか、大手塾に勤めていた時から疑問でした。

あと一つなんだかなぁと思っていることがあるので、この際書いてしまいます。

それは、一部の塾で合格発表時に繰り広げられる、高校に塾の合格者が集まっての記念撮影です(さすがに私が勤めていた大手塾ではコレはやっていませんでした)。合格発表時も、入試当日と同じくらい非常にデリケートな場です。定員割れしている学校でない限り、合格者もいればもちろん不合格者もいます。たくさんの受験生を抱えている大手塾なら尚更のことです。そんな時に、「ハイ、○○塾の合格した子集まって」と声を掛け、泣きたい気持ちを押し殺している不合格者の横で、合格者と塾の先生が楽しそうに記念撮影をしている光景は、同業者としてゾッとします。デリカシーはないのかと。塾の先生として、合格発表の場で一番配慮しなければいけないのは、合格して喜んでいる生徒じゃなくて、落ちて肩を落としている生徒じゃないのかなと。

結局その合格者の集合写真も、塾の折り込み広告に使うための宣伝手段です。自塾の宣伝のために、受験という神聖な場所を「激励」という名目で雰囲気を汚し、デリケートな場の合格発表で不合格者の気持ちを土足で踏みつける行為。同じ塾の人間として、毎年憤りを感じています。

だから、私は大手塾を辞めたのです。