入試直前のこの時期だからこそ、「基礎」についてもう一度考える。

2017年12月29日

今日が2017年最後の授業でした。

「基礎が大事だ」「基礎を復習しなさい」「基礎が全然身についていない!」基礎基礎基礎基礎基礎基礎・・・

この冬期講習中に、受験生に何度投げかけたかわからないほど、「基礎」という言葉を使いました。入試まであと残りわずかになったのに、全然基礎が身についていない。基礎的な問題で点数を容易に落としている。その度に、「基礎」がどれだけ大事なのかを懇々と説明してきました。

今日の記事は、この「基礎」について、改めて考えていきたいと思います。

「基礎が大事」の本当の意味

「基礎ができる」と、「基礎が身に付いている」の2つは似て非なるものです。

うちの塾生たちの多くは、「基礎ができる」状態にはしてあるかもしれませんが(それにも達していない生徒もいますが)、「基礎が身についている」状態にまでになっている生徒はまだまだほんのわずかです。

例えば小学校の九九。
「サブロクジュウハチ」と瞬時に言える子と、「サブロク、えーっとなんだっけ、3が6個分だからえーっとえーっと…あ、そうか18だ!」と時間がかかる子がいたとします。どちらの子どもも3×6=18になることは分かっているので、九九はできることになります。では、123×456のような筆算になるとどうでしょうか。サブロクジュウハチを瞬時に出すことができなかった子が、果たして123×456ができるでしょうか。

これが、「基礎ができている」と「基礎が身についている」の違いです。
基礎というのは、わかっている、できるレベルではダメなのです。九九のように、無意識に瞬時に答えが「浮かぶ」レベルにないと、それよりも発展的な問題でその基礎を活用することはできないのです。つまり、間違えた問題や分からない問題は、その問題を解くのに必要な基礎が、自由自在に活用できるレベルにまで達していないということなのです。

英語なら、文法を無意識レベルにまで落とし込まないと、いくら長文読解を解いても解けるようになりません。数学の空間図形なら、基本的な相似や三平方の定理を、瞬時に答えられるレベルにまでになっていないと、空間図形だけをいくら解いても解けるようにはなりません。どの科目もどの単元も、応用問題を解くのに必要なのは、「基礎ができる」ことではなく、「基礎を無意識レベルにまで落とし込む」ことなのです。

基礎は基礎的な問題では確認できない

「だったら入試問題なんて難しい問題をやらないで、基礎的な問題集を何回も繰り返し勉強しておけばいいじゃないか」と思う人もいるでしょうが、それも間違いです。

先ほどの九九の例を思い出してください。サブロクジュウハチが瞬時に出てくる子も、時間をかけてようやくわかる子も、九九のドリルならどちらも正解できます。ドリルが正解できたのだから、「自分は基礎が身についていない」なんて思いもしません。でも、123×456のような筆算のドリルになると解けなくなる。その時にはじめて、「あ、もっと九九の練習をしなければいけない」と気づくのです。

基礎が身についているか身についていないかは、その基礎が必要な応用問題を解いてみてはじめて分かることです。また、その基礎が必要な応用問題を解くことで、身につけた基礎をどのように活用するのかが見えてくるのです。

基礎を「身につける」方法

「じゃあ、結局基礎をやればいいのか?応用問題をやればいいのか?」

どちらもです。どちらも必要なのです。

まず、教科書や基礎的な問題集で基礎をインプットする。そのあと、ある程度の量の実践的な問題を解いてみる。全て素早く解けたなら、その単元の基礎が身についているといえます。もし、間違う問題が多かったり、解けたとしても非常に時間がかかったりした場合、その単元の基礎的な問題集や教科書に戻り、基礎が身につくまで繰り返し取り組みましょう。ある程度身についたかなと思ったら、また実践問題を解きながら、基礎が身についたことの確認や、実践問題中での基礎の使い方を学ぶのです。

つまり、「基礎問題→実践問題→基礎問題→実践問題」の順番で勉強することが必要なのです。ところが、うちの塾生を見ていても、「基礎問題→実践問題→実践問題→実践問題・・・」と、基礎をちょろっとやった後にやたらと実践問題を繰り返しています。基礎が身についていないまま、実践問題を何度繰り返してもほとんど効果はありません。「時間をかけて勉強しているのに、全然成果が出ない」となってしまいます。

まとめ

基礎は、無意識レベルにまで落とし込んではじめて、その科目の学力の土台となります。落とし込んだ基礎は、そう簡単には傾きません。だから、模試の点数が安定し、少々難しくなろうが出題傾向が変わろうが、入試でもコケることはありません。

逆に、「基礎がわかる」レベルで満足してしまっている科目は、土台が作られていないのと同じです。だから、模試の点数も不安定になり、少し難しくなったり出題傾向が変わったりするともうアウトです。簡単に入試でコケてしまいます。

基礎を落とし込むために基礎的な反復をし、基礎を確認するために実践問題を解く。そしてまた基礎に帰る。これが基礎の身につけ方です。
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これが年内最後のブログになります。塾生に今一番伝えたいことを記事にしました。
来年は1月4日に授業、5日に模試、6日から8日にかけては恒例の直前合宿と、年始から突っ走っていきます。

それでは皆さま、よいお年を。