スポーツ推薦で進学するべきか、勉強で高校を目指すべきか。

2017年11月17日

今年の3年生の中には、スポーツ推薦で私立高校への進学が内定している子が一人います。塾を開校してから10年目になるが、この10年で初めてのことです。

スポーツ推薦の話が出た直後に、この生徒の保護者の方から推薦を受けるべきかどうかの相談がありました。1年生からうちの塾に通っているくらいなので、定期テストでは合計9割弱の得点をとれるレベルには学校の勉強はできます。スポーツ推薦の話が来る前までは、他の塾生と同じく上位の公立高校を目指して勉強していました。

このまま受験勉強を続けて公立に行くべきか、もしくはスポーツ推薦を受けるべきか。本人も親御さんも悩んでいました。スポーツ漬けで全く勉強してこなかった子なら、迷わずスポーツ推薦の方を取るでしょう。でも、この子は受験で普通に上位の進学校に進むこともできます。悩む気持ちも十分理解できます。

ただ、私の結論は最初から「スポーツ推薦で行け」です。

「スポーツ推薦で高校に行っても、そのスポーツでプロになれる人はごく一部の人だけだし、やっぱり勉強で進学した方が安心なのでは」と多くの人が考えます。「スポーツ選手になれる確率は低いのだから、それで進路を決めるのは危険だ」という考え方は、その逆をとれば、「スポーツ推薦で進学したのなら、必ずプロのスポーツ選手にならなければいけない」と言っていることと同じです。決してそんなことはありません。

スポーツという入口は、別にスポーツ選手という出口にだけ繋がっているわけではありません。もしかしたら、そのスポーツを通してスポーツ医学の方に興味を持つかもしれないし、スポーツ用品の開発をしたくなるかもしれない。あるいは、そのスポーツを題材にした小説を書きたくなるかもしれないし、スポーツクラブを運営したくなるかもしれない。体をつくるための栄養学に興味を持ち、スポーツの場面で活躍できる栄養士になるかもしれない。・・・想像するとキリがありません。

このように少し想像してみるだけでも、入口はスポーツでも、出口は決して「プロのスポーツ選手になること」だけでなく、無限の可能性が広がっています。自分の力を必要としてくれている環境で、周囲の期待に応えるパフォーマンスができるように自らを鍛えていくことも、普通の人ではなかなかできない貴重な経験です。それによって学ぶこともたくさんあるでしょう。わざわざその機会を蹴ってしまう理由が分かりません。

さらに付け加えると、「スポーツで進学すること=勉強を捨てること」にはなりません。実際、この塾生は、スポーツ推薦が決まった今でも、他の受験生と同じように塾に通い続けていて、授業のない日は必ず自習にも来ています。本当に賢い子です。

スポーツでも勉強でもそうですが、それが直接将来の職業に繋がっているわけではありません。スポーツや勉強に真剣に向き合い、切磋琢磨することで得られる経験こそが、未来を切り拓くツールやキッカケになるのです。

スポーツでも勉強でもなんでも良いのです。プロの選手になれないから、将来数学なんて使わないから、今やっていることなんて無駄になるってことはありません。「アイツ、あんなに勉強ばっかりして気持ち悪いな」「アイツ、あんなにスポーツばっかりしてプロになれるわけでもないのにバカじゃねーの」と周りから引かれるくらい、とにかく何かを一生懸命頑張ることで得られる経験が、そこで身についた根性が、そして現状を打破するために考え抜く思考力が、必ず将来に繋がります。