受験勉強の流れと今受験生がやるべきことを5分で説明する。

2016年6月29日

もうすぐ7月、2016年も下半期だ。中3生にとっては、そろそろ受験を意識し始めなければいけない時期でもある。とは言え、今まで入試を経験したことのない中学生にとって、「受験勉強って何をどうすればいいのか分からない」というのが本音だろう。

そこで今日は、初めて受験を迎える中3生のために、受験勉強のざっくりとした流れと、今やるべきことを5分で説明してみる。かなりの長文になるが、ぐっと5分我慢してまずは読んでみて欲しい。

受験勉強の流れ

高校入試の場合、受験勉強は大きく3タームにわけることができる。「基礎完成期」「実践演習期」「仕上げ期」の3つだ。まずは、それぞれの時期にやるべきことと、その時期の特徴をざっと説明してみよう。

基礎完成

受験勉強初期にやらなければいけないことは基礎の完成だ。英語なら文法事項、数学なら各分野の解法パターン、国語なら基本的な読解法、理科社会なら今まで習ったことの基礎の復習が基礎の完成にあたる。

後で詳しく触れるが、基礎を完成させたところで入試問題が解けるわけではない。ましてや偏差値もそれほど上がらない。基礎完成期に意識しなければいけないことは、入試問題が解けるようになることでも偏差値を上げることでもなく、「過去問や実践形式の問題を、ある程度スムーズに解けるための土台作り」ということだ。

実践演習期

ある程度基礎が完成してきた教科や単元から実践演習期に入ろう。受験勉強で一番実力が付いたり偏差値が上がったりするのは、この実践演習期である。残念ながら基礎をいくら完成させたとしても、実践演習期が短かったり問題演習が少なすぎたりしたら、偏差値は上がらない。薄っぺらい基礎問題集を完璧にしたはずなのに、模試では点数が取れないことに悩む受験生をよく見かけるが、その理由が実践演習が少なすぎるからに他ならない。

これは散々ブログ記事にしてきたが、「基礎さえ完璧にやればどんな問題でも解ける」という合格アドバイスがあるが、基礎だけで応用問題や入試問題が解けるのは一部の天才肌だけなので鵜呑みにしてはいけない。たしかに基礎を完璧にすれば、どんな問題でも解けるのは事実だ。難問とされる問題でも、ひも解いていけばいくつもの基礎が何重にも重なって構成されているからである。頭の良い人は、然程訓練しなくても、問題のひも解きが自由自在にできる。だから「基礎さえやればどんな問題でも解ける」というアドバイスになる。

しかし凡人にとって、問題のひも解きはそんなに簡単なことではない。いくら基礎が完璧でも、問題をひも解けないのだから、完璧にしたはずの基礎の出番がないまま終わってしまう。

だから凡人には実践演習で量をこなすことが重要なのである。実際の入試レベルの問題や過去問を一つでも多く解き、問題のひも解きのパターンや順序を知ることが必要不可欠なのだ。

応用問題は基礎が完璧だからできるのではない。基礎が完璧で、かつ応用問題のひも解き方を知っているから解けるのだ。その辺りのことを分かっていない受験生が毎年実に多い。多すぎる。受験直前、私のメールボックスは会ったこともない人からの相談メールで溢れてしまうのだが、ほとんどの質問は「学校のテストや問題集はできるけれど、模試は壊滅的になる」といった相談だ。

うちの中3生の平均偏差値は毎年65を越えるが、それは何もうちの塾生が天才だから、勉強が良くできるからという理由ではない。基礎を完成させた上で、受験で必要と思われるほとんどの応用問題のひも解き方を練習しまくっているからに過ぎない。もしこの練習をしないで、いつまでも基礎問題集や定期テストレベルの問題だけやっていたら、うちの塾生だって平均偏差値65を越えることはないだろう。

実践演習期に何をすれば良いか、どんな教材を使うべきかは過去記事で既に紹介しているので、参考にして欲しい。

参照:)

仕上げ期

ある程度実践演習をこなし、各教科の偏差値が68程度になれば、そろそろ仕上げ期に入ろう。仕上げ期は、知識やできないところの穴を一つ一つ埋めていく、非常に地味な作業になる。仕上げ期に差し掛かると、どこに知識の穴が空いているのか、どこに苦手な問題が潜んでいるのか、ほぼ自覚がない。逆に言うと、ほぼ自覚がないくらい仕上がっている状態が仕上げ期になる。

自覚がないので、知識の穴や苦手をあぶり出す作業が必要になる。あぶり出すために過去問を一通り解き、間違った問題やそれを含む単元を、基礎問題集や教科書に戻って丁寧に潰していく。つまり仕上げ期は、実践演習期と基礎完成期でやってきたことをミックスした勉強を繰り返すことになる。

仕上げ期でいくら知識の穴を潰していったからといって、模試の偏差値はそれほど上昇することはない。しかし、仕上げをきちんとやると、入試本番で失敗しにくくなる。よく、実践演習期の終盤で偏差値が上昇したからといって、仕上げをしない受験生がいるが、そういう人は入試本番で失敗してしまう可能性が実に高くなる。「模試ではあんなに取れていたのに、本番では失敗して落ちてしまった」という人のほとんどが、このような仕上げ期を経ないまま入試を迎えたからだ。

理想的な受験勉強の進め方

繰り返すが、模試の偏差値や点数は「実践演習期」に最も伸びる。ということは、実践演習期になるべく多くの時間を費やしたい。教科によって異なるが、理想的な進め方はこうだ。

  • 基礎完成期→英語:〜10月、数学:〜12月、理科社会:〜11月、国語:〜10月
  • 実践演習期→英語:10月〜1月下旬、数学:12月〜2月、理科社会:11月〜1月下旬、国語:10月〜2月
  • 仕上げ期→英語:2月、数学国語:なくていい、理社:1月下旬〜2月

数学国語の仕上げ期についてはまた稿を改めるので、ここで詳しくは書かない。数学の基礎完成期が最も遅い理由は、数学という科目の性質によるのだが、これもここで書くのは控えることにする。

これを読んだ受験生の中には、「こんなに基礎完成が遅くてもいいの?」と疑問に思う人がいるかもしれないが、高校入試はこれよりも時期を早めるのが難しい。なぜなら、11月下旬まで内申のための定期テストの勉強をしなくてはいけないし、たとえ塾に通っていても、塾で中3内容全てを履修し終えるのはどんなに早くても11月くらいになる(塾に通っていない人なら1月になっても学校の授業が終わらない)。

逆に言うと、11月くらいまでの基礎完成時期をサボってしまうと、スムーズに実践演習期に入れず、ただでさえも短い実践演習期がさらに短くなってしまう。そうなってしまうと、模試の偏差値も点数も思うように伸びない。もしくは、仕上げ期の時間がなくなってしまい、知識の穴がたくさん空いたまま入試を迎え、本番で失敗してしまうという危険性が高くなる。

だから今すぐやるべきことは基礎完成

話を元に戻そう。だからこそ今すぐ基礎の完成に手をつけるべきなのだ。まだ中3内容を全部履修し終えていない今は、中1中2内容の基礎を復習するとともに、塾に通っている人なら今習っている中3内容をきちんと積み上げていこう。塾に通っていない人は、中3内容を自分で予習するべきだ。

まずは自分の苦手な教科の単元からでよいので、中1中2の復習をはじめよう。教科書の太字の意味さえもあやふやな単元がある状態なのにも関わらず、のんきに過ごしていてはダメだ。

ちなみにうちの塾では、すでに5月から入試対策として英語・理科の基礎完成をはじめている。英語は毎回の授業で中1中2の文法復習、理科は3週間に1単元のペースで中1中2内容の復習をこなしている。来月からここに社会の基礎完成が加わることになる。早くから基礎を完成させ、実践演習期を1日でも長く確保するのが目的だ。

受験勉強は夏休みスタートなんて誰が決めた?

「夏から受験勉強を頑張ろう」なんて思っている人に聞きたい。夏まで待たなければいけない理由がどこにあるのだろうか。特に2期制の中学に通う生徒にとっては、9月まで定期テストもないし、最大のイベントである運動会も修学旅行も終わったことだし、今は非常に時間に余裕のある時期であるはずだ。

引退試合を控えて部活に精を出したい気持ちも分かるが、部活動を頑張ることが受験勉強を始めない言い訳にはならない。今日から夏休みが始まるまで、あと3週間以上もある。この3週間を無駄にしてしまうと、偏差値を伸ばすための「実践演習期」が3週間短くなってしまう。これはかなりの痛手となってあとあと返ってくるはずだ。

受験勉強を夏休みまで待つ必要はない。とりあえずまずは1つの単元の復習から、今すぐはじめてみよう。