H28年度横浜サイエンスフロンティア特色検査分析と研究:制限時間60分でたった4問の試験に求められるものとは?

昨日までGW休暇をいただいていました。今日から通常授業の再開です。

私事で恐縮ですが、この休暇中、丹沢のユーシン渓谷というところに初めてトレッキングに行きました。神奈川県民になってから13年経ちますが、神奈川にこんなに美しい場所があったことを今まで知らずに過ごしてきて、人生半分損した気分になりました。それ以降、トレッキングにはまってしまいまして、昨日も明神ヶ岳に登ってきました。地元の小学生にとっては遠足レベルの登山ですが、登山初心者の私にはそれでもかなりキツかったです。お蔭で今日は筋肉痛です。

トレッキングをしてみて感じたことがあります。受験はマラソンにたとえられることが多いけれども、マラソンよりも登山に近いんじゃないかなと。険しい道を目の前にペースダウンしてしまうことや休んでしまうこともあっても、一歩ずつ前へ前へ向かって進んでいくその過程の先に、素晴らしい景色が待っていること。途中で諦めてしまっては、頂上に到達したときの景色は決して見ることができないということ。登山も受験も同じような気がします。

と、前置きはこれくらいにして。GW明けのブログ1発目は、特色検査分析記事の続きです。今日の高校はTwitterでリクエストをいただきました横浜サイエンスフロンティアです。距離的な問題でこの地域からサイエンスを目指す中学生はあまりいませんが、うちの塾からは2年前に1人同校に進学しています。横浜市の肝いり政策で平成21年に開校し、現在8年目を迎える同校。29年度には中高一貫校化される予定で、ますます注目を集めています。特色検査も他の県立高校とは一線を画し、かなりの独自路線を突っ走るサイエンスフロンティア。今年の特色検査を分析しました。

60分のテストで問題数がたった4問

横浜サイエンスフロンティア(以下YSF)の特色検査の制限時間は60分で、出題数は毎年たった4問です。他の県立高校の特色検査は制限時間に対する問題数が多く、読解スピードや処理能力の速さ、また解けそうな問題から解いていく要領の良さなどが求められる一方で、YSFはほぼそのような能力を必要としません。冒頭にも書いた通り、同じ「特色検査」と名が付いていても、YSFのそれは他校のそれとは全く異なる能力を要するのです。

YSFの特色で求められる3つの能力

では、YSFの特色検査では何が求められているのか。YSFの特色検査の出題傾向は毎年ほとんど同じです。つまり、毎年の受験生に求めるモノが一貫されているのです。YSFの特色検査は、「英語力」「情報処理能力」「発想力」の3本を柱に毎年構成されています。

英語力

まず、YSFの一番の特徴として挙げられるのは、毎年大きなテーマがあり、そのテーマに沿った全4問の問題を解くための資料が6つ〜7つもあるということです。その資料の最初が毎年英文で書かれています。この英文を読めないと、問題全体のテーマを把握できません。ちなみに今年のテーマは「バイオミメティクス」でした。ただ、この冒頭の英文の資料はそんなに難解なものではないので、そこまで高度な英語力は必要としません。トップ校に合格できる程度の普通の英語力があれば、無理なく読めるような内容になっています。

情報処理能力

資料の2つ目からは、英文の資料から読み取れる大きなテーマに対する理解をさらに深めるような日本語による文章や、それに関連する表やグラフがいくつも登場します。そしてようやく、それらの膨大な資料の後の最後のページに、全4問の問題が掲載されているのです。

これらの膨大な資料の一つ一つをテーマに沿ってきちんと読み取れるかどうか。そして複数の資料とテーマの内容を関連づけて考えることができるかどうか。これがYSFの柱の2番目の「情報処理能力」です。YSFの数少ない問題の大半は、資料を正確に読み解いて考えられるかどうかを見るための問題に充てられていて、そのことからも高い「情報処理能力」をかなり受検生に要求してきていると言っても良いでしょう。

発想力

YSFの全4問のうち、ラストの問題は発想力を試す問題になっています。今年は、バイオミメティクスに関連して、「生物の特徴を活かした生活に役立つものまたは技術を、解決したい生活上の問題点、どの生物のどのような特徴を用いるか、その技術を使うことの長所、という3点をふまえて分かりやすく説明せよ。」という問題でした。

この問題で絶対的に必要なのは「アイディア」です。もちろん、アイディアを表現するための力や文章力なども必要となりますが、肝心のアイディアが思いつかなければ元も子もありません。最初にも述べた通り、YSFは全4問に対して制限時間が60分と、比較的時間に余裕のある試験になっていますが、その意図はここにあるのでしょう。あなたならどう考えますか。あなたならどんなアイディアがありますか。時間をかけても良いから、じっくりと考えてくださいというメッセージなのだと思います。

まとめ

YSFはご存知の通り、県内で最高峰の理系の高校であり、将来研究や開発等に携わるであろう人材を育てる高校です。理系というと、数学の計算や理科の応用問題を発想する人が多いと思います。事実、毎年このような形式の特色検査を課すYSFに対して、「理系らしくない」「もっと数学や理科の問題があってもいいのではないか」という声が塾業界からもチラホラ聞こえてきます。しかし、理系に進む人間にとって、計算が速くできることよりも、大量の問題を解く訓練を受けてきていることよりも、もっと必要不可欠なのが「英語」「情報処理」「発想」の3つです。科学の論文は基本的に英語で書かれ、英語で発表します。研究にはデータはつきもので、ただの数字の羅列であるデータから何を読み取り、どう意味付けするかが日々求められます。また、科学技術は、分野横断的で創造的な発想力なくしては発展していきません。

そういう意味で、YSFの特色検査は「最も理系らしい」内容と言えるのではないでしょうか。特色検査を通して、理系に進むために必要な能力を受検生に暗示しているように思います。

YSFを目指す人は、とにかく全ての過去問を研究してみましょう。特色の過去問だけでなく、前期後期の時代のYSFの前期試験も似たような内容なので参考になります。過去問を解くことでも十分データの扱い方を学ぶことができます。また、発想を問う問題に対しては、自分の頭からアイディアを振り絞る練習をしてください。発想力を鍛えるためには、とにかく自分の頭で深く考える経験を積むことが必要不可欠です。過去問以外にも、たとえばニュースを見ているとき、「自分ならどうするか」を考える癖をつけておくと良いと思います。

この本も参考になるかも。