H28年度湘南高校特色検査研究と分析:「言語・立体・データ・分析」が全ての問題の軸!

特色検査研究の第5弾は湘南高校です。今年度、うちの塾から湘南にチャレンジする(できる)生徒はいませんでしたが、柏陽高校と同様、通信教育での特色検査対策を受講していた生徒が湘南にチャレンジしました。後ほど彼の感想も紹介します。

大問数が4題から3題に。出題傾向にも若干の変化

まずは全体的な問題構成や出題傾向から見ていきます。特色検査が始まって以来、湘南高校の特色は3年連続大問4題からの構成でした。その内訳はこうです。

【H25年度〜H27年度までの湘南特色検査大問】
問1:言語に関する論理
問2:単発の理系中心の思考系問題
問3:社会系のデータ読み取りからの計算と比較論述
問4:算数・数学系のパズル的問題

この例年のパターンが崩れ、以下のような内訳になっていました。
【H28年度湘南特色検査大問】
問1:言語に関する論理
問2:データ読み取りと立体の単発問題集
問3:理科の発展問題

問1の言語に関する論理の問題のテイストや、問2で立体問題を出題するといった湘南特色おなじみの部分は今年も踏襲されていましたが、特に問3の理科の発展問題では「湘南らしさ」が薄くなり、厚木などの理科の発展問題と似たような問題になりました。個人的には、毎年湘南の問3の社会系からの数学、そして計算結果を踏まえての比較論述は結構楽しみにしていたので、それが削られたことが残念です。

全体的な設問数は変わらず、文字数が増加

大問が1題削られたからといって、全体的な設問数は昨年度までとほとんど変化はありませんでした(昨年度17問→今年度18問)。ただ、湘南は1つの設問に複数の問題があり、それら全て正解できて得点というスタイルが多いので、実際に解かなければいけない問題数は18問よりもはるかに多くなり、60分の制限時間内に全て解くのは厳しい問題構成となっています。

さらに今年は、問3の理科の発展問題でのリード文が3ページに渡りぎっしりと書かれていたので、読まなければいけない文字数は軽く1万字を越え、例年よりも格段に増えました。また、リード文だけでなく、各設問ごとの問題文も長くなり、文章を正確に速く読める力が弱い受験生にとっては厳しい問題だったと思います。

各設問分析

問1:「常識」に関する言語論理

問1は「常識」をテーマにした言語に対する問題です。毎年この問1に言語をテーマにした問題をぶつけてくるあたり、「ことばを大切にしなさい」という受験生へのメッセージのように思えます。この問1には英語の問題も含まれるのですが、湘南の特色は他の特色検査実施校と違って英語の長文読解は出題されません。毎年湘南の問1を見ている限り、湘南が大切にしているのは言葉の論理です。日本語や英語は、その論理を理解する手段にすぎないといったスタンスを感じます。

今年の湘南には、この問1の最後に「1889年からの国政選挙における有権者の資格の歴史」を90字以内で記述させる社会の問題がありました。2015年に公職選挙法が改正され、選挙権年齢が18才以上に引き下げられたことを受けてのタイムリーな問題です。この辺は、どこかの特色検査で時事問題として出題してくるだろうと睨み、うちの塾の特色検査対策でも詳しく取り上げていました。

ただ、湘南の問題は、国政選挙における有権者の資格の歴史を単純に問うのではなく、それと「差別」とを絡めて記述させるというひと味加えられた問題でした。そういう部分に、教科書で学んだ知識を実社会の問題と絡められるかどうかという特色らしさを感じます。

問2:データ問題と立体

立体の問題はもはや湘南特色おなじみです。しかも中学数学の空間図形を三平方や相似を駆使して解く問題ではなく、公立中等教育学校の適性検査レベルで見られるような空間センスを問う問題を好んで出題します。今年もその部分は変わらずです。

また、湘南が好きなのは、与えられた資料を分析して考えさせる「データ問題」。今年の問2の設問は全部で5問ありましたが、うち3問がデータ問題、残り2問が立体問題でした。立体問題は、空間センスがない人にとっては厳しいとは思いますが、「データ問題」は毎年それほど難しい問題は出題されません。与えられたデータをきちんと分析し、自分が持っている知識と絡めて問題を解くということを重視していると思います。

問3:理科を中心とした教科横断問題

問3は、湘南にしては珍しいタイプの問題です。厚木高校の理科系問題や、横浜翠嵐の特色検査を彷彿とさせるような、「天体・暦・緯度経度」という理科の題材からの大型の教科横断型問題でした。
ただ、題材となっている「天体・暦・経度緯度」は、過去にもいくつかの特色検査校で出題されています。たとえばH26年度の厚木高校で経度緯度の問題、同じく厚木高校の特色検査出題例(新しい入試になる前に発表されたもの)で、アレクサンドリアとシエネの南中高度の違いから2都市間の距離を計算させる問題、H26年度平塚江南での暦の違いの問題などです。このため、過去の他校の特色検査をしっかりと解いてきていた人にとっては、馴染み深い題材だったことでしょう。

先ほども述べた通り、リード文が長くまた各設問ごとの問題文も長いため、読解が苦手な受検生にとってみれば難しいという印象を受けたことでしょう。しかし実際のところは、各設問ともそれほど難問奇問というわけではなく、問題文をきちんと読み解き、与えられた情報をもとにじっくりと分析・思考を重ねれば、無理なく解ける問題がほとんどでした。

湘南に合格した特色検査対策受講生の感想

冒頭にも書きましたが、うちの塾の特色検査対策講座を受講していた生徒が、合格発表後に特色検査等の詳しい感想を手紙にしたためて送ってくれました。ここでは、その一部の特色検査の感想を紹介します。

  • 英語の文がほぼ出なかった。
  • 問1(エ)の選挙権の問題は、特色検査対策テキストが当たりました。
  • 問2(ア)年間外国人旅行者数の1位がフランスというのは、1月くらいの教育テレビの「NEWSで英会話」で取り上げられていた話題だったので、縁を感じた。
  • 問3は天体の分野で、理科の電話帳(全国入試問題正解)をやっていればそれほど難しくはなかった。
  • 問3(キ)はH26の厚木の問Ⅲに類似していた。

ちなみに彼の開示得点報告では、特色の点数が94/100ということでした。この内容のテストで94点は、正直凄いと思います。特色検査対策講座を添削していた頃から感じていましたが、彼は文系理系どちらにも偏りがなく高いレベルで身に付けていて、また人並みはずれた知識がありました。それを物語っているのが、彼の感想の中の3番目にある「問2(ア)の年間外国人旅行者の1位が・・・」という部分です。常に知識のアンテナを張り巡らせて生活している証拠でしょう。

まとめ

ここ最近の特色検査分析の記事で、毎回のように「特色検査は文系に強い者が有利」だと書いてきました。しかし湘南の場合は違います。他校のように、理系ができなくても英国社の文系ができればどうにかなるということはありません。文系の生徒にとって得点源となる英語長文読解の出題はありません。

実際に、湘南は毎年「言語・立体・データ・分析」を軸に問題を作っています。英語ができる方が有利だとか、数学ができる方が有利だとかという作問ではありません。もちろん、膨大な文章量を読みこなすだけの高い言語能力は必要です。でも、それは県下トップの湘南を受検するような生徒であれば、ほとんどの人が持ち合わせているでしょう。

高い言語能力がある前提で、文系理系のどちらにもバランスよく精通している人。また、机上の勉強だけでなく、日常生活においても常に知識のアンテナを張り巡らせ、たくさんの知識を持っている人。そういう人が湘南の特色検査で高得点を取るのでしょう。付け焼き刃の対策だけでは、どうにもなりません。