H28年度平塚江南高校特色検査研究と分析:攻略のポイントは、おなじみの文系問題で点数を稼ぐこと。

特色検査研究と分析第2弾の今回は、今年度うちの塾から2名の塾生がチャレンジした平塚江南高校です。
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【問題と解答】平成28年度神奈川県内公立高校 特色検査

参考:昨年度の平塚江南特色検査分析→「平塚江南2015年度特色検査研究:分析と対策法をまとめてみた

特色検査の問題構成

H28年度の平塚江南の特色検査は、設問1・設問2・設問3の大問3題から構成されていました。昨年度は設問1・設問2の大問2問構成だったので、大問が1つ増えたことになります。大問数は1題増えましたが、全体的な設問数は昨年度の21問と今年も変わらず。小田原高校の特色検査の設問数が24問なので、平塚江南の方が小田原よりも3問少ない構成です。

しかし、昨年度の分析でも述べましたが、平塚江南の特色検査は小田原に比べると基本的な問題が多い分、そこまで時間的な厳しさは感じません。素早く解ける問題と、じっくり時間をかけて考える問題とのメリハリがしっかりとついているので、50分の制限時間内で十分解ききることはできるでしょう。

平塚江南特色検査の特徴

ではここから、平塚江南の特色検査の特徴を各設問ごとに詳しく書いていきます。

課題1:平塚江南おなじみの形の文系中心問題

特色検査が始まって以来、平塚江南の課題1は毎年同じような形式で出題されています。まずは国語の説明文的文章を読ませ、そこから英国社中心の問題を展開し、最後はその説明文にまつわる内容の英語の会話文へと問題が続いていく構成です。

このブログでも、また特色検査対策セミナーでもお話していますが、この問題の作り方は滋賀県の特色選抜の総合問題Ⅰとつくりが非常に良く似ています。昨年度の設問1の本文は、滋賀県特色選抜と問題のつくりだけではなく本文まで同じでした(参照:「特色検査対策に!ダウンロード可能な教科横断型の他県入試問題5選【2016年度版】)。

平塚江南の課題1の特徴は、本文と直接関係のない単発の設問が含まれていることです。言い換えると、本文を全く読まなくても問題が解けるということになります。しかもそれらの問題はほとんど選択肢から選ぶ形式で、5教科の基本的な知識さえあれば簡単に、そして瞬時に解くことができます。これが、小田原と平塚江南の特色検査の一番の大きな違いです。小田原の特色は、ほぼ全ての問題で、本文を読んでいないと解くことができません。また、たとえ本文を読んでいたとしても、基本的な知識で瞬時に解ける問題が非常に少ないのです。同じような設問数の多さの両校ではありますが、
1つ1つの問題に対する時間のかかり方が全く異なるのです。

平塚江南ならではのユニークな論述は発想力勝負!

平塚江南は毎年この課題1にユニークな論述を出題してきます。今年はユニークな論述が2問登場していました。

問7:イグ・ノーベル賞に対して反対意見も賛成意見もある。あなたは、イグ・ノーベル賞に賛成か反対か、その根拠とともに書きなさい。なお、根拠はイグ・ノーベル賞の「賞の精神」と関連づけること。

問9:ノーベル賞は創設時から、原則として、そのときに生存している人に受賞者を限っているが、仮に創設時(1901年)には亡くなっていた人に平和賞を与えるとすれば、誰に授与したいか。歴史的人物を一人あげ、その理由も書きなさい。

これらのユニークな論述は発想力の勝負です。小田原高校のように字数制限もないので(解答欄に収まっていればよい)、問題の条件から逸れていなければ何を書いても正解になるはずです。間違いを恐れずに大胆に自分の意見をはっきり述べられるかが問われています。

課題2:新しく登場した設問2は理系のような文系問題

冒頭にも述べた通り、今年の平塚江南の特色は大問3題からの構成となりました。課題2が、今年から新たに付け加えられた設問になります。課題2は、海の環境と生物をテーマとした短めの説明文を読んで、3つの設問に答えていく問題です。一見すると理科のようですが、問題を解くために必要な条件はほぼ説明文中に書かれています。つまり、理系の文章を題材とした文章読解問題と言い換えても良いでしょう。もちろん理科の知識は多少必要とはなりますが、それよりも文章をよく読んでいるかどうかがポイントになります。

課題3:社会よりの理系問題

例年の平塚江南の特色であれば、課題1は文系・課題2は理系と、文理が結構ハッキリと分かれていたのですが、今年は先ほども述べたように課題2が登場したことにより、文理の境目があやふやになり、より教科横断色が強まりました。

課題3は理系問題という括りなのでしょうが、今年はやや社会よりの問題になっていました。生粋の理系の問題と言えるのは、ラスト2問くらいでしょうか。最後の1問は、水と氷の密度と割合・体積まで絡む、理系人間にとっては非常に面白い問題でしたが、逆に言うと理系の人間が本領を発揮できる問題がこの1問しかなかったことになります。そういう意味では、今年の平塚江南も小田原と同様、文系色が強まり、文系型の受検生にとって有利な試験だったといえるでしょう。

まとめ

昨年度も書きましたが、平塚江南は基本的な知識を問う問題が設問の多くを占めます。また、論述も、基本的な知識の上に成り立つ発想力があれば、それほど難しいことはありません。よって、通常の5教科の学力検査の対策を万全にしておけば、それで十分特色検査対策も賄えてしまいます。

今年は理系問題がそれほど難しくありませんでしたが、過去には結構時間と高度な思考を要する理系問題も出題されていました。逆に言うと、平塚江南の文系問題は、理系ほどハードな問題が出てくることはありません。よって、まずは文系問題で確実に点数を稼ぐこと。そのための基本的な知識、英文読解力、国語の文章読解力を鍛え上げること。大問3問構成となった平成28年度も、文系の課題1だけで100点中60点分の配点があります。ここで限りなく60点満点に近づけるようにすることが、平塚江南攻略のポイントと言えるでしょう。

ちなみに、小田原と平塚江南は地理的にも偏差値的にも同等だと言われ続けてきましたが、ここ数年の特色検査の問題を見る限り、両校に違いが生じてきているように思います。特色検査で比べた時、解きやすいのは確実に平塚江南の方です。小田原は言語能力が高い受検生でないと厳しいものがありますが、平塚江南は基礎基本がきちんと押さえられていれば特色でも最低6割はとれてしまうような問題です。

両校が求める生徒像の差が、如実に特色検査に現れているのでしょうね。