「太郎くん」の話

中3生の実質最後の定期テストが終わり、少しずつ結果が返却されています。今日は、早々と結果を報告してくれた中3生のうちの1人の話を書いてみようと思います。現塾生なので実名を避けて、仮名で「太郎くん」とします。

太郎くんが入塾してきたのが中2の夏。近所の塾にずっと通っていたけれども、なかなか成績が良くならないという理由で、うちの塾に転塾してきました。入塾当初の太郎くんの実力は、お世辞にも褒められるレベルではなく、特に英数国は本当にヒドいものでした。塾の授業についていくのもやっとの状態、いや、本当のことをいうと、英語や数学はついていくことさえも難しい状態だったと思います。

うちの塾には、入塾の際に「適性検査」というものを実施しています。平たく言えば入塾テストです。学校の既習内容や、講習体験生は講習の内容から5割以上取れていることが入塾の基準になります。太郎くんは講習体験生だったので、講習の内容からの適性検査を受けてもらいました。結果は、ギリギリで5割に満たず、本来なら入塾をお断りする成績です。しかし、彼の頑張りに少なくとも心を打たれていた私は、「正直ついていくのは大変だと思う。でも、太郎くんがそれを覚悟で、でもこの塾で頑張りたいという意志が強いんだったら、一緒に頑張ろう。」と言いました。適性検査の基準に満たない生徒にこんなことを言うのは、異例中の異例のことです。

太郎くんは即答せずに、「しばらく考えさせてください」と言いました。私はそれでいいと思いました。太郎くんは、ここで「頑張ります!」と薄っぺらい返事をするような子ではありません。自分の立ち位置を鑑み、慎重に物事を考える子です。それから1週間くらい経った後に、お母さんと一緒に「入塾させてください」とやってきました。

入塾をしてからというもの、特に壊滅的だった英語の遅れを取り戻すべく、毎週の補習に根気強く通いました。きっと、現中3生の中で最も自習室に通った時間が長いのも太郎くんでしょう。太郎くんの一番の長所は、コツコツと努力ができることでした。そして、もう一つ、たとえ結果が出なくても、決して腐ることなく努力をやめないところも、太郎くんの大きな特徴でした。もしも彼が、怠け者だったり、結果が出ないことに対してすぐにふて腐れるような性格だったら、彼の入塾を認めていなかったでしょう。

一生懸命コツコツと努力を続けてはいましたが、結果はなかなか数字になって現れてくれませんでした。学校の定期テストも、もちろん入塾前とは見違えるように良くはなりましたが、彼自身の目標点からはほど遠く、彼が勉強に費やした時間と点数が比例することはありませんでした。

しかし、目に見える数字での結果はなかなか現れなかったものの、目に見えない手応えは少しずつ感じるようになりました。目に見えない手応え。それは、太郎くんが自分にあった勉強法を少しずつ確立できるようになったことです。先ほども述べたように、太郎くんは自分の立ち位置を鑑み、慎重に物事を考える子です。勉強に対しても、「自分は勉強するのに時間がかかるタイプだから、定期テストも人よりも早く、テスト3週間前や1ヶ月前から準備をしなければいけない。」と自分の置かれた状況、自分の勉強に対するスピードを良く考えた上で、勉強の計画を立てるようになりました。

それから、太郎くんはテスト2週間前には、すでに学校のワークやプリント類、塾の定期テスト用教材を終わらせて、テスト2週間前(うちの塾で定期テスト勉強会カンヅメが始まる頃)には、他の塾生がまだ学校のワーク類を解いているのを横目に、塾の定期テスト前の確認テストや技能科目の勉強をするというスケジュールで勉強を続けました。定期テスト前だけでなく、塾の授業で行う様々なテスト類に関しても同様に、誰よりも早くから、そして誰よりも時間をかけて取り組んでいました。

そしてようやく、3年生の2回目のテストで、太郎くんは5教科で合計8割以上の点数を取ることができました。彼のこれまでの努力が、目に見える数字となって現れてきたのです。ちょうど、入塾から1年を過ぎた頃でした。

今回の実質中3生最後の定期テスト前、太郎くんは焦っていました。理由を聞くと、「いつもよりも勉強時間がとれていない」とのこと。今回の定期テストの前、すでに塾では入試対策が始まっていたので、その勉強に追われてなかなか定期テストのための勉強にとりかかれなかったというのです。しかし、そんな彼の焦りとは裏腹に、定期テスト前の塾の確認テストでは、勉強時間が取れていないにも関わらず、しっかりと合格点がとれていました。2年生のときの太郎くんは、塾の確認テストで不合格連発の常習犯だったのに、今回は次から次へと合格していきます。

私は焦っている彼に、こう言いました。「勉強時間が思うように取れなくても理解できているのは、それだけ太郎くんの能力が上がってきた証拠だ。だから、焦る必要はない。今回のテストは、今までより勉強時間が少なくても絶対に点数が取れる。自信を持ちなさい。」

そして今回、太郎くんは入塾から今までの中で、最も高い合計得点を取ることができました。1年2ヶ月ほど前、あれほど崩壊していた英語のテストでも、初めて9割を越え、彼自身が最も苦手としている国語でも8割を超えました。

そんな太郎くんは、定期テスト後も1日も休むことなく毎日塾の自習室に通っています。

もともと頭の良い子は、少しの努力(努力とも呼べないかもしれません)で良い点数を取ることができます。要領が良い子は、ちょっとくらいサボっていてもそれなりの結果を残します。でも、太郎くんみたいなタイプの子は、誰よりも一生懸命努力をしなければ、結果はついてきません。

私は時々分からなくなることがあります。努力しなくても点数が取れてしまう子と、一生懸命努力を惜しまない子と、どちらの方が優秀なんだろうと。どちらの方が評価されるべきなんだろうと。

でも一つだけ言えることがあります。それは、あの時、入塾基準に満たない太郎くんに、入塾してもらって本当に良かったということです。

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