子育て本から世界的小説まで、7月のおすすめ本3冊を選んでみました。

2015年7月8日

最近ブログで本についてのことをよく話題にしているからか、少しずつ本に対して興味を持つ塾生が増えてきました。図書コーナーに置いている本を借りていったり、「何を読めばいいか」を私に聞いてきたり、または今自分が読んでいる本についてアレコレと説明してくれる子もいます。

とても良い傾向なので、引き続き1ヶ月に1回くらいはおすすめ本を紹介していきたいと思います。今月は3冊。1冊目は親御さんに読んでほしい本、2冊目は中高生から大人まで幅広く読んでほしい本、3冊目は小学生から中学生まで読める小説です。

「学力」の経済学

「学力」の経済学 中室牧子著

ゲームは子どもに悪影響なのか。ゲームやテレビは1日2時間までと制限時間を決めているが、果たしてこの数字には根拠があるのか。子どもは褒めて育てるべきというが、それは本当なのか。勉強に関してご褒美で子どもを釣るのは教育上良くないのか。ー親なら一度は考えたことのあるこれらの子育て上の疑問。これらを『経済学』の観点から科学的根拠をもとに説明してくれる一冊です。

「科学的根拠」という部分から最もかけ離れたところにあるのが今の教育だと思います。だから、「息子を全員東大に入れたお母さんの子育て法」とか、「学年ビリのギャルが有名私大に合格した勉強法」などのような、極めて個人的で特殊な体験談や子育てノウハウを参考にする人が後を絶たないのでしょう。

本書の中にも、

どのような教育がいいか、という問いへの回答は、教育される本人の特性や能力、環境などさまざまな要因によって左右される・・・(中略)自分が病気になったときに、まず長生きしているだけの老人に長寿の秘訣を聞きに行く人はいないのに、子どもの成績に悩む親が、子どもを全員東大に入れた老婆の体験記を買う、という現象が起こるのは奇妙な思わないだろうか。

という一節がありますが、確かにこれには頷けます。科学的エビデンスの無い個人の体験談や子育て本を読むよりも、科学的根拠に基づいて客観的に述べられたこの本を読んだ方が、よほど子育てのヒントになると思います。なかでも、“教育経済学的に正しい「ご褒美」の設計”、“子どもはほめて育てるべきなのか”、“「少人数学級」と「子どもの生涯収入」の関係”は、目からウロコでした。

わかりあえないことからーコミュニケーション能力とは何か

わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書) 平田オリザ著

「幕が上がる」の著者平田オリザ氏が、演劇家・劇作家の視点から「コミュニケーション能力とは何か」を問う一冊。比較的易しい言葉で書かれているので、中高生でも十分読める内容です。高校入試の国語の説明文読解問題レベルなので、内容や難易度からも、出典で出てきてもおかしくないでしょう。

企業に就職する際だけでなく、今や大学生や中高生に至っても、コミュニケーション能力の必要性が声高に叫ばれている時代です。しかし、コミュニケーション能力とは一体何かを明確に定義できる人はどれだけいるでしょうか。自称「コミュ障」である私が、自分のコミュニケーション能力が若干でもマシになればと思いこの本を手に取ってみたのですが、これを読んだからと言ってコミュニケーション能力が飛躍的に向上し、「コミュ障」とサヨナラできるというようなハウツー本ではありませんでした。しかし、そんな薄っぺらなハウツー本以上に、日本人と世界の人々のコミュニケーションの違い、男性女性といった性差による言葉から来るコミュニケーションの違い等、コミュニケーションの正体について、文化的言語的な視点から深く考えさせてくれる良書でした。

私が本書の中で最も感銘を受けた一節を紹介します。

「いい子を演じるのに疲れた」という子どもたちに、「もう演じなくていいんだよ。本当の自分を見つけなさい」と囁くのは、大人の欺瞞にすぎない。いい子を演じることに疲れない子どもを作ることが、教育の目的ではなかったか。あるいは、できることなら、いい子を演じるのを楽しむほどのしたたかな子どもを作りたい。

大人にも、中高生にもおすすめの一冊です。うちの塾の本棚にも置いています。

アルケミストー夢を旅した少年

アルケミスト―夢を旅した少年 パウロ・コエーリョ著

去年の卒塾生にもプレゼントした一冊です(読んでくれたかな?)。世界でこれまでに最も売れた小説は皆さんご存知の「ハリーポッター」、2番目はこれも有名な「ロードオブザリング」。あまり知られてはいませんが、この「アルケミストー夢を旅した少年」は、ハリーポッターとロードオブザリングに続いて世界で3番目に売れた小説です。一人の羊飼いの少年が旅をしていく過程で、夢を叶えることや人を愛することなど、人生における大切なことを学んでいくというストーリーです。

翻訳された海外小説によくあるように、文化的背景や言葉の違いから、日本語で読んだときに若干違和感を覚えたり、表現がわかりづらい部分もありますが、易しい文章で書かれており、小学校高学年〜中学生が読むのにちょうど良いレベルとボリュームだと思います。夏休みの読書感想文用にも良い素材です。

さすが世界で3番目に売れている小説だけあって、ぐいぐいと物語に引き込まれていきます。また、この小説はただ単に面白いだけでなく、生きていく上での教訓があちらこちらに散りばめられており、ちょっとした自己啓発本を読んでいるような気分にすらなります。

私が読書メモをした部分を少し紹介します。

僕は他の人と同じなんだ。本当に起こっていることではなく、自分が見たいように世の中を見ていたのだ。

悪いのは人の口に入るものではない。悪いのは人の口から出るものだ。

おまえが現在を良くしさえすれば、将来起こってくることも良くなるのだ。

夢を諦めずに、その夢と生きることがいかに大切であるかを教えてくれる一冊です。塾の本棚にもあるので、良かったらどうぞ。